拍手のお返事

こんにちは~。
冷凍庫がアイスでパンパンの私です。

前回の記事に拍手をくださったみなさま、ありがとうございます!


7月29日に拍手コメントをくださったTさまへ

こんにちは!脱稿おめでとうございます!
Tさまは足しの作業でしたか。私はいつも削りばかりで、足した経験はあまりない気がします。完成されてるものに付け足すのもなかなか難しそうですね。。
アイスは家にあると、つい食べてしまうんですよね(´・ω・`)
そして無いと買ってしまうという(笑) 恐ろしいループですよ~。フーフフ
本当、お腹がピーならない程度においしくいただくことにします。
コメントありがとうございました!



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出しました~

おはようございます。

7月末しめきりのD様の原稿が、手元から離れていきました (  )ノ~~バイバイ
今日には届きそうです。

どうなるやら~。

こんなにたくさん削ったことは初めてで(40ページも!)、けっこう大変でした。
ある場面を削って、あとからその場面のことについてもう一度触れているところを削り忘れてて、なにこれ? みたいなことになったり、削った中にたとえば、しゃがむ、という動作が入っていて、そのあと立ち上がった、って書いてあるのだけど、しゃがんだところを削ってしまったために、もともと立ってますけど? みたいなエロいことになったりしました(?)
ちゃんと全体の流れを見ながら、削らないとだめですね(あたりまえだの~)

とりあえず、ひと区切りです。
7月中はアイスとか食べながらちょっとゆっくりして、8月からがんばります(8月もアイス食べます!)!

D様ラストスパートに入ってるみなさまもがんばってください!
ではでは☆彡




拍手のお返事

こんにちは。
毎日暑いですね~。でもそんな夏が好きです///


7月21日に拍手コメントをくださったななしさまへ

こんにちは。お返事が遅くなってしまい、申し訳ありません。
リゾート・ア・ゴーゴーを読んでくださり、ありがとうございます!
このお話は夏に旅行気分で書いたので、解放感あふれるものに仕上がったのだと思います。あ、もちろん実際には旅立ってませんが^^;
自分でも楽しんで書いたお話なので、おもしろいと言ってくださり、とても嬉しいです。
また、ブログもちょくちょく更新しますので、時々のぞきに来てくださいね~。
コメント、ありがとうございました!






拍手のお返事(にかこつけたぐだぐだ反省会)

おはようございます。
ずっと雨ですね(´・ω・`) 台風にご注意ください。

いろいろなお話に拍手をくださっているかた、ありがとうございます(*゚ー゚*)


7月7日に拍手コメントをくださったTさまへ

おはようございます。お返事が遅れて申し訳ないです。
リゾート・ア・ゴーゴーも読んでくださり、ありがとうございます。゚(゚´Д`゚)゚
千佳子の件での、書き方と受けとり方の問題、難しいですね。
たとえば ≪千佳子のほうは正史のことが本気で好きで、かつ正史が自分を本気で好きでないことを知っていながら3年間付き合っていた→形式的な愛のないプロポーズをされて怒りが爆発し、指輪を見もせず突き返す→その頃出会った人に求愛され2週間で結婚を決める→相手の気持ちにほだされ、正史のプロポーズに対してとった自分の酷い態度を反省する→南の島で久々の再会≫ という裏設定が書かれていたなら、少しは千佳子に共感できるのではないかと思うのです。
でもそんなことはひとつも書かれていないですし、読まれるかたにそこまでの脳内補完をゆだねるわけにもいかないですし、そもそも今考えた後付け設定ですし。←えっ?
わたし的には、千佳子がああいう行動をとってくれたから二人が結ばれたのだし(大樹も言うように)、いいや、めでたし~、という考えだったのですが、やはり正史のプロポーズをあんな手酷く突き返して、二週間後に結婚決めて正史の前でダイヤの指輪見せびらかして、久々に会って号泣でごめんなさいって、、どういうこと? イミフと思われるかたもいらっしゃると思います。
自分の中では、このキャラはこういう気持ちだからこういう行動をとったのだ、とはっきりした意味を持たせていても、それがまったく伝わらないこともありますよね~。どこまで書くべきか、難しいです。
Tさまに向けたお返事が、ほとんど反省になっております^^; タイトルも変えておこう。。(本当にすみません<(_ _)>)
気を取り直して。←まだ書くんかいっ
大樹を気に入ってくださったようで、とても嬉しいです! あんな人に捕まっちゃったら、もう逃げられないですな(||゚Д゚)コエー
番外SS、うまく書けるかわからないですが、期待しないで待っててくださいね~。
ノートを捨てたところ、素敵と言ってくださって嬉しいです。でもお話はあそこがピークで、後半が前半に比べて弱いのも敗因かなぁ、と思ったりしています(また反省してしまった)。
文字数ギリギリまで感想を書いてくださり、本当にありがとうございますっ!
わたしのほうこそ、長々と失礼しました。またブログにお邪魔しますね~^^
では☆彡



拍手のお返事

おはようございます。

リゾート・ア・ゴーゴーを読んでくださったみなさまと、拍手をくださったみなさま、ありがとうございました!
梅雨時にからっと夏っぽい(というか、ぶっとんだはちゃめちゃな)お話、いかがでしたでしょうか。

そして、リゾート・ア・ゴーゴー以外のお話に拍手をくださっているかたも、まことにありがとうございます!


7月3日に拍手コメントをくださったSさまへ

はじめまして。お返事が遅れてしまい申し訳ありません。
リゾート・ア・ゴーゴーを読んでくださり、ありがとうございます!
素敵な作品だなんてご感想をいただき、身に余りすぎている、と思いつつやはりにやけております(´、ノ`)
そうですよね。よくよく見てみると社長と凡人という王道設定なのですね。Sさまに指摘されるまで気づきませんでした(王道感皆無のため^^)。
キャラも個性的だとほめていただいて(にやける)、嬉しいです。でも近ごろキャラを個性的にすることに躍起になっている(?)傾向があって、そのせいで人間味(リアリティー?)に欠けてしまったのではないかと自分では思っているのです。
感想書くの難しいですよね。でも全然下手なんかじゃないですよ! 私がこんなに喜んでおりますので^^ 感想下手な私が言うので間違いないです(説得力ゼロ)
あたたかいコメントありがとうございました!
またSさまのブログにもお邪魔させていただきますね~。


7月3日に拍手コメントをくださったMさまへ

おはようございます。お返事が遅れてしまい、申し訳ありません。
お話を気に入ってくださって、とても嬉しいです♪
その後SSもまた書けたら書いてみたいと思います。ちょっと先になると思うのですが。。い、いつか。。
間が空くと思われますが、気長にお待ちくださいm(_ _)m
嬉しいコメントとリクエスト、ありがとうございました!


7月4日に拍手コメントをくださったななしさまへ

おはようございます。お返事が遅れて申し訳ありません。
本当にたくさん読んでくださり、そしてたくさんの感想をありがとうございます!
やはり好みはあると思いますので(私も読むのが苦手な分野はあります、そして書けない分野はもっとあります!←聞いてないですかっ(゚ー゚;))、読もうとしてくださっただけでもとても嬉しいです~。
境界線上のふたりの例をあげてななしさまがご指摘されたことについてなのですが、そうなのです。。これはキャラに私が透けているダメな点なのですが、私には少し常識に疎い、というか緩い(大人としてそれはどうなのか)面があるようでして、もちろんそのことを良しとして推奨しているというわけではなく、善悪より好き嫌いを優先しがちなため、ななしさまが引っかかったことなどにどうも頭が向かないといいますか(もちろんこのことにも指摘されるまで気づいていませんでしたあぁ。。)。ダメ人間といいますか。私のそういうストッパーがきかない、欲望優先の危険な一面もきっと、デビューを妨げる要素のひとつとなっていると思います(なに書いてるかわかりづらくて申し訳ないです)。
本屋さんにぜひ並びたいですよ? この先ななしさまの予言(?)どおりになればいいのですが。。いや、なればいいのです!←?
とてもためになるコメントとお褒めの言葉をありがとうございました!
気に障るような感想なんてひとつもなかったですよ! 
またブログの更新も見に来てくださると嬉しいです♪


7月4日に拍手コメントをくださったKさまへ

はじめまして。お返事が遅れてしまって申し訳ありません。
理屈抜きで面白かったという感想、とても嬉しいです(ノ∀`) そして私のためにお怒りになってくださり(?)、ありがとうございます! 
今回はリゾートということで、私自身も少々羽目をはずしてしまい、攻(はっちゃけ)×受(はっちゃけ)というキャラになってしまったので、身近にいそうな感じもなく、全体を通しての感情移入は難しかったのではないかと自分では思います。しかしそこがいい、とおっしゃってくださるKさまは神様ですか!
二股の件(笑)なのですが、千佳子は正史のプロポーズを蹴った二週間後に婚約しているので、千佳子という人物の感情や行動に焦点を絞ると、そこはやはり不誠実なのではないかと思われます。主役二人を引き立てるスパイスとして投入した千佳子を、ただ話を展開させるためだけに存在させてしまったゆえに、矛盾が出てきてしまいました。千佳子、ごめん(´・ω・`)
求められているものと自分が書けるもの、書きたいものとのバランスをとりつつ、Kさまのような規格外の人物好きの方の心を鷲づかみにできるような物語を書けるよう、これからも努力していきます!
とても嬉しいコメント、ありがとうございます!
Kさまのブログのほうにも、また遊びに行かせていただきますね♪












リゾート・ア・ゴーゴー(9)R-18【終】

 波が寄せては引いていく。その永遠の繰り返しのように、自分の体内で起こる律動もこのまま終わることなく続けばいいと思った。
「正史」
 名前を呼ばれて目をひらく。苦しげに眉を寄せた表情と目が合う。正史はその雄の色気に満ちた大樹の顔に見惚れた。
 もうここが外だとか、誰かが来るかもしれないだとか、そんなことは快楽に侵された正史の頭からはすっぽり抜け落ちていた。
「痛いか?」
 尋ねられて首をふるふる横に振る。正直に言うとありえない大きさの異物が体内で動くと多少痛みは感じたが、それを凌駕する快感で頭の中のほとんどが埋めつくされていた。
 ずっとこうしてもらいたいと思っていた。触れるだけじゃなく、中に入ってきてもらいたかった。大樹の硬いペニスが自分の内部を抉った瞬間、たまらない恍惚感に包まれた。
 腰を支えていた手が胸に乗せられる。乳首を捏ねられると、大樹の硬い指の腹についた砂粒がざらりと尖った先端を刺激した。
「ぁンっ、ふぁ……あ、あっ」
 体内に埋めこまれた楔は、一定のリズムを崩さず抜き差しを繰り返す。目をつむり、その確実にもたらされる快感を追っていると、さらに強い刺激を身体が求めだす。
「た、いき……、アッ、はぁ…………」
「なんだ」
「もっと!」
 ついさっき終わらなければいいと思ったばかりなのに、今はこの甘く緩やかな快楽からの解放を望んでいた。
「強く、して……っ、もうイキたい……!」
 真上にある大樹の顔に手を伸ばし、懇願する。震える下腹の奥に溜まった熱を、外に出したくてたまらない、と。
「あなたは、本当にかわいいな」
 耳元で囁かれた低く甘い声に身体が震える。はにかんだ大樹の顔がぐっと距離を詰めてきて、直後、噛みつくようなキスをされた。
「んふっ、ん、んー……ぁんっ」
 執拗に口内を舐めつくされたあと、ちゅっと音を立てて離れていった厚みのある唇を目で追っていると、突然、足首を肩に担がれ、腰から下が宙に浮いた。
「わっ……、な、に……、んぁあ!」
 腰をつかんだ大樹の指がくびれに食いこみ、反った自分のペニスの茂みの向こうに、二人のつながっている場所が見えた。
「や……っ、あ……んっ!」
 角度の変わった挿入でもたらされた快感は強烈なものだった。長く硬いペニスが内襞を捲り上げるようにずるずると這いでてゆくと、すぐさま最奥をめがけて突き刺さり、隙間もなくびっちりと埋められる。あまりの快感に我を忘れ、喉の奥から自分のものとは思えない甲高い声が次々と紡がれては、夕空へと吸いこまれていった。
「あ、あ、アンッ、た、いきっ、たいき」
「気持ちいいか?」
「うん……っ、はぁ……、ぁ、あー……」
 見下ろしてくる獰猛な瞳に誘われて、正史は両手を宙に浮かべ、亀のように首を伸ばして自らキスを求めた。
「んー……んっ、ふぅ……、んぅー……」
 硬い髪を引っぱり、後頭部を引きよせると、さしだした舌を思いきり吸われた。腰を打ちつける動きは強さを増し、いやらしくうねらせながら正史の感じる一点をついてくる。
「やっ、あぁ……、そこ、も、だめ、っ……あんっ、あ、あ」
 余裕をなくし、自分で求めたキスから顔を背けて逃れると、正史は自分ではしたなく腰を揺らしながらきれぎれに訴えた。
「あん、イク……ぁっ」
「正史」
 絶頂の手前、余裕なんてないのに、自分の名を呼び、見下ろしてくる苦しそうな笑顔が、たまらなくかっこいいとか思ってしまう。
「あ、ほんとに、いっちゃう……っ」
 力強い律動に揺らされながら、正史の体は緩やかに襲ってきた大きな波にさらわれた。

「しかしよくそんな勘違いしたな」
 頭上から勢いよくシャワーが注がれる。
 浜辺で果てたあと、正史は腰が立たず、大樹に負ぶわれて部屋に戻ってきた。今日は意識があったが、眠ってしまった前の二回もやはり大樹に負ぶわれて帰ってきたのだろう。立てない、と伝えたときの、大樹が正史をかつぐまでの動作は実にスムーズだった。
「千佳子の旦那さんが、打ち合わせにずっと来なかったから」
「ああ、多忙な人だから。それでもドレスの試着のときなどは来てたけどな。正史が見かけなかっただけだろう。もし俺が結婚するんなら、従業員内で噂ぐらいもちあがる」
 言われてみればそうだ。
「それに、結婚式の一週間くらい前から、きみは家に帰ってこなくなったから。千佳子と新居に住んでるのかと思った」
「素晴らしい想像力だな」
 楽しそうに笑う大樹の声が、バスルームに反響する。
「正史が俺と一緒にいたくないんじゃないかと、思ったんだよ。俺はあなたを見ると発情するし、あなたは喜んで俺の愛撫を受け入れてるようには見えなかったしな。以前の恋人にまだ気持ちが残ってるように見えたから、彼女の結婚式を前にひとりになって、整理したい考えもあるだろうと、正史に部屋を譲って、俺は仮眠室に泊まっていた」
「そう、だったんだ…………」
 自分の言葉足らずが招いた誤解が、二人のすれ違いに繋がってしまったのだ。正史は目の前の鏡に映った、泡で頭がモワモワになっている、眼鏡がないせいでぼんやりかすんで見える自分に向かって、ため息を吐いた。
「気を使わせて、ごめんなさい」
「済んだことだ、気にするな。いいから目つむれ」
 言われたとおり固く目をつむると、シャワーのぬるいお湯がドシャー、と頭上に落とされる。人と一緒に風呂に入るのは中学校の修学旅行以来だった。人に身体を洗われることは、たぶん幼稚園以来。帰るなり大樹に無理やり風呂場に押しこめられて、羞恥でどうにかなりそうだったが、足も腰もがくがくで抵抗する気は起きなかった。
「それに、俺はゲイだから結婚しないし」
「はあ……」
「従業員も俺がゲイだってみんな知ってる」
「はあ、あ?」
「ちなみに、俺が必死で正史を口説いてたこともみんな知ってる」
「はあああああ?」
 ついさっき反省していた気持ちはどこかに吹っ飛んでしまって、正史は素っ頓狂な声をあげて後ろを振り返った。なにがおかしい、と肩をすくめる大樹を目にして、たぶん、自分とは根本的な構造から違っている人間なんだろうと、改めて思った。
「そんな大事なことを、どうして黙ってたんだっ」
「言ったら怒っただろ?」
 言わなくても、十分怒ってる!
 どの従業員たちも自分たちを見たら、いいコンビだ、とかお似合いだ、とか言ってた理由が判明した。千佳子だけでなく、ホテル内の人間全員に二人の関係が知られていたのだ。
 知らなかったのは自分だけ。
「おい、どこに行く」
「風呂から出るんだ、さわらないで変態っ」
 怒ってさきに上がろうとしたら、背後の大樹に捕まった。明確な意思を持った手が怪しい場所ばかり触ってくるので、正史はかすれ声で叫んだ。変態、だなんて暴言を人に向かって吐くのを見たら、二か月前の自分は卒倒するかもしれない。だけどそうやって多少きついことを言ったって、受けとめて笑ってもらえる幸せがあることもそのときはまだ知らなかった。
「もう……!」
 振り返ってにらみつけても、目の前から見返してくるのは、どうやら余裕の表情のようだ。悔しいが、そんな顔も好きな自分に気づかされる。正史はさっと伸びあがって、微笑を浮かべる唇に自分からキスをかすめた。離れた瞬間、ぼんやりした視界に驚いた表情が映って、少しだけ溜飲が下がる。
「タオルは?」
 それでもまだ羞恥をともなった怒りは解消されておらず、ぶっきらぼうに尋ねてみると、大樹が棚から取りだしたフカフカのバスタオルを正史の体に巻きつけてくれた。
「歩けない」
 さらにわがままを重ねると、楽しそうに笑った大樹が正史の体を横抱きに持ちあげる。
「どこに連れてこうか」
「ベッドまで」
 まだ濡れた手で寝室のあるほうを指さした。
 高らかに笑う大樹の声を聞きながら、正史は広い胸に顔をうずめて、こっそり微笑んだ。





リゾート・ア・ゴーゴー(8)

 手首を引っぱられたまま散々歩いてたどり着いたさきは、初めて大樹と出会った浜辺だった。ゆっくりと速度を落とし、立ち止まった大樹が正史を解放する。右の手首を見ると大樹が掴んだ場所だけが赤くなっていて、その触れられた証拠の跡に嬉しくなって正史はふっと頬を緩めた。
 前方で無言で海を眺める大樹の背中を、背後からそっと見つめる。ブラックスーツの後ろ姿はなにを考えているのかわからない。
「そんなに好きだったのか」
 唐突に尋ねられて正史は首を傾げた。たぶん、千佳子のことを言っているのだろう。
「そんなに、好きじゃなかったと思う」
「俺に、結婚式なんて失敗しろ、と言っただろう。もし好きではないというなら、今日、式場にやってきた理由はなんだ」
「あの、それは……、きみが彼女と結婚すると思っていたから」
「…………は?」
 唐突に振り返った大樹が、目をいっぱいにひらいて見つめてくる。
「今日が、きみと千佳子の結婚式だと、思ってたんだ」
 自分はとんでもない勘違いをしていたようだ。だって大樹はここにいる。千佳子の隣には、大樹ではない別の男の人がいた。
 大樹と千佳子は結婚しないのだ。大樹と対面してるとその事実がじわじわと頭に浸透してきて、体中が幸福で満たされていく。
「なんだよ、それ」
「だ、だって、あの……」
 目の前にやってきた大樹が、眉間にしわを寄せて見つめてくる。正史はドキドキ速まる心音に気づかないふりをして、自分が勘違いしたきっかけを話しだした。
「結婚式の十日ほど前、きみがタクシーの前で千佳子に指輪を渡してたのを見たんだ。彼女は婚約指輪を外して、きみがその空いた薬指に新たな指輪をつけたでしょ?」
 大樹が用意した結婚指輪だと思ったのだ。サイズを確認するためにためしにはめてみたのだと。あれがのちに勘違いの妄想をふくらますはめになる決定的な瞬間だった。というか、普通あんなシーンを見たら誰もが勘違いするに決まってる。千佳子の結婚相手が大樹でないというのなら、あのまぎらわしい行動はいったいなんだったというのか。
「ああ。これか?」
 内ポケットを探って、大樹はきらりと光るシンプルな指輪を取りだした。
「そう、それだ。三階から見てたからよく見えなかったけど、そんなのだった気がする。それをきみが千佳子の指にはめたから―」
「正史、これがなにか、覚えてないのか?」
「なにかって…………?」
 呆れた顔で問われて、目の前に突きだされたスクエアの小さなダイヤモンドが埋めこまれた指輪をじっと見つめた。言われてみれば、どこかで見たことがある気がする。
「あなたが彼女のために買った、婚約指輪だろ?」
「あ…………、あー!」
 その指輪にうっすら見覚えがあったのは、自分が買ったものだったからだ。大樹は正史が海で死のうとしたあのとき、砂に埋めたノートと共に、正史が千佳子のために用意した婚約指輪を持ち帰っていたのだ。
「でで、でもなんで、きみはその指輪を千佳子の指につけたんだ?」
 大樹がそんなわけのわからない行動をとったから混乱したのだと、自分の買った指輪を判別できなかった恥ずかしさをごまかすために心の中だけでこっそり責任転嫁していると、大樹が指輪の輪っかから海を眺めてふっと息をこぼした。
「結婚式の打ち合わせのときに、彼女に聞いたんだ。あなたたちがホテルの玄関口で親しげに話しているのを見かけたあと、嫉妬を押し殺してさりげなさを装い、正史とお知り合いですか、と。すると彼女は突然号泣しだした。そのときにすべて、話を聞いた。二人が三年間付き合っていたことも、彼女が正史のプロポーズを断ったことも」
「知って、たんだ……」
 大樹が強引に正史の身体に触れた夜。大樹はあの女性は誰だと執拗に聞いてきた。だけど尋ねる前から、大樹は千佳子が正史の以前の恋人だと知っていたのだ。あのときの不機嫌の理由は、婚約者の元恋人への怒りなんかではなく、正史に真実を秘密にされてごまかされたことへの不満と、やはり自分に向けられた単純な嫉妬のせいだったのだ。
「彼女は、プロポーズまでしてくれた三年も付き合った恋人に、一方的に別れを告げてしまったことを後悔してた」
 なにも悪いことをしてないのに指輪を突き返され、二週間後に別の男との結婚を決めた非常識な女に、怒って当然なのに正史は責めなかった。偶然再会したときこそ、冷たい態度をとられるかと思ったが、正史はおだやかな顔でおめでとう、と言ってくれた。そのことにとても感謝しているのだ、と。
「そのときに、ああ、正史は彼女にふられて死のうとしたんだと、彼女と別れたことが死にたくなるほどつらかったんだと、気づいた」
 大樹の目が目を離すことを許さない強さで見つめてくる。視線に縫い留められたままじっと動けないでいると、ふっと目元を緩ませた大樹が指輪を正史の顔の前に近づけてきた。
「本音を言えば、この指輪もノートの中身と同じように海へ捨ててしまいたい。だけどそうすることは簡単だが、そんなことをしてもあなたの彼女への思いが消えるわけじゃない」
 指輪を純白のケースに仕舞うと、大樹はそれを正史の手に握らせた。
「これは正史が彼女につけてもらうために用意したものだろ?」
「まあ、その予定だった、けど……」
 叶わなかった。受けとってもらえなかった正史の思いがこもった指輪。
「俺は号泣する彼女に同情したわけじゃないんだ。正史が彼女のために買ったものだから。指輪にこめられた正史の思いを無駄にしたらきっとあなたが悲しむし、自分も後悔する。あなたの手に返す前に、指輪の本来の目的を一度きちんと達成させることで、リングにこめられた思いを昇華させてやりたかった」
 大樹からの提案を千佳子は快く引き受け、指輪をつけ涙を流した。千佳子のほうも自分の意思を伝えることで頭がいっぱいで正史の気持ちを考える余裕がなく、プロポーズに対してありがとうの一言も言えなかったことを深く反省していたらしい。バーで会って早々、告げられたお礼の言葉の意味が、今わかった。
「だがそもそも正史の私物を許可なく持ち出して、勝手な行動をとったことはいけない。あなたの気持ちが落ちついた頃に報告するつもりでいたが、彼女の結婚よりさきにけりをつけるべきだと、秘密裏に動いたことは不誠実であるし、軽率だった。申し訳ない」
「あ、謝らないで、そんなふうに」
 砂浜に埋めたままほったらかしていたノートも指輪も、大樹がちゃんと回収してあるべき形に収めてくれた。渡されるべき人を失い、宙ぶらりんになってしまった正史の過去の思いが詰まった婚約指輪。大樹はそれを自分なりのやり方でなんとか救ってやろうとしてくれたのだろう。捨てられなかった婚約指輪を持ちだされて別れた彼女の指に勝手にはめられたなんて話を聞いたら、百人中九十九人は憤慨するのかもしれない。でもそんな大樹のはちゃめちゃな行動が、正史には嬉しかった。
 強引で型破り。でも同時に誠実で温かい。
 その行動ひとつで、すごく大切にされているとわかってしまう。大樹なりの愛情の示しかた。表では子供っぽい嫉妬の感情をむき出しにしていたくせに、裏では正史の気持ちをいちばんに考えてくれていたのだ。
「ありがとう。きみのその気持ちが嬉しい」
 見下ろしてくる目をまっすぐ見つめて心から礼を言うと、珍しく大樹が照れたようにはにかんだ。めったに見られない年下らしい表情を目にして、愛おしさが胸の中にあふれてくる。まっすぐ自分を見つめてくる瞳を信じてさえいれば、真実は必ずその中にあったのだ。偶然見てしまった疑惑を問いつめることもせず、ひとりで妄想をふくらませて大樹を疑ってしまったことを、正史は深く反省した。
「ありがとうと言えば、彼女にも感謝しないとな」
「ん…………、ん?」
 ぽん、と肩を叩かれて、どういうことかと顔を上げる。
「同情はしないが、正史を振ってくれた彼女には感謝したい。まあ彼女自身は後ろめたさを拭えないみたいだったから、正史のことは俺が必ず幸せにするから、なにも心配することはない、と言っておいた」
「は…………? な、な、なに言ってるんだよ、千佳子に!」
 正史の胸に詰まっていた甘やかな気分は、大樹の発言で見事に吹き飛んだ。
「なにって、事実だけど」
 涼しい顔で言ってのけた大樹に愕然として頭を抱える。千佳子がバーで遠慮なく自分の幸せをアピールしてきたのも、このブーケをこちらに向けて投げてきたのも、ちゃんと意味があったのだ。正史が彼女に打ち明けるまでもなく、大樹が二人の関係を彼女にばらしていたなんて。元恋人が男と付き合ってるというのに動揺しない千佳子にもびっくりだが、なにより話が筒抜けているとも知らず、彼女に見当違いの嫉妬をしていた自分が恥ずかしすぎて、正史は抱えた自分の頭をポカスカ叩いた。
「それに、彼女がこっぴどく振ってくれなかったら、正史はこの島にやって来なかったわけだろ?」
 この男は、ぬけぬけと~。
 自分の頭を木魚あつかいで痛め続ける正史の手をとって、大樹は首をすくめてみせた。
「よかったじゃないか、結果オーライで」
「し、し、死にに来たんですけど!」
 もし大樹とこのビーチで遭遇しなければ正史は死んでいたのだ。命を救ってくれた張本人を責める自分もバカバカしいが、あまりに大樹が簡単にありがたがるから、憤慨してみたら―。
「でも俺に見つけられただろ?」
「もしかしたら、見つけられなかったかもしれないじゃないかっ」
「俺が運命の人との出会いに、失敗するような男に見えるか? 大切な人を死なせるわけないだろう、この俺が」
 根拠なき自信でもって言ってのける男に言いたいことは山ほどあるというのに、口はひらきっぱなしでなにも返せないのが悔しい。だけどむちゃくちゃなことを言ってるはずの大樹の声には魔法でも仕かけられているのか、まるでそれが真実かのように伝えられ、聞く者を腰くだけにしてしまう力があるようだ。運命の人とか大切な人とか。そんなありふれた言葉が大樹の声で紡がれると正史の心をときめかせて、白い顔がみるみる赤らんでいく。
「運命とか、なんでそんなのわかるんだ」
「直感」
 野生児相手に論理を求めたのは間違いだった。
「直感で気に入ったような思いなんて、きっと長く続かない」
 不安と不満を混ぜて正直な思いを伝えると、大樹は僕のその反応がおもしろかったのか、口角を上げて嬉しそうな微笑を浮かべた。
「なら、ほかにも挙げてみようか」
「な、なにを」
「正史は憤慨するかもしれないが、あのノートが培ったのだろうストイックでまっすぐな性格は、個性的で魅力的だ」
「そんなことは言われたことがない。いつも融通効かないし頑固だし変わり者だって嫌われる。自分でもそう思う」
 言い返すと、ほら憤慨した、と大樹が笑う。
 ノートが無くなった今でもやはり、根本的な性格は変わっていない。そしてそれが長所でないことだけは自分にもわかる。
「掃除が得意だろ」
「そうじ?」
「正史のメイクした部屋には塵ひとつ落ちていない。客室係のあいだでも評判だ」
「仕事では役立つかもしれないが、そんな細かいやつとプライベートで付き合いたいと思う人なんていない」
 自虐的に言い放つと、大樹はふ、と緩く息を吐いたあと、ちょっと怒ったような雰囲気をまとって、真正面から目を見つめてきた。
「他が正史をどう思おうと俺の知るところじゃない。大ざっぱな自分にはあなたの細やかさは新鮮だし、必要だ。俺が気に入ってるあなたの一部を否定されると腹が立つ」
「な、なんだそれ」
「そもそも正史の自己分析より、俺の直感のほうが正しいに決まってるだろう」
 あんまりな物言いだ、と憤りかけたが、その度を越えた横柄さに呆気にとられてもいて、正史の体からみるみる力が抜けていった。そもそも怒られてる内容が、なんか変だ。
「それに顔も身体も好みだ。見た目の印象より低めの声質も耳に心地いい。笑うと見える八重歯や、眠るときのコンパクトな姿勢、怒ったときにじわじわ目が潤んでくるところなんかも悪くない。それから―」
「も、もういい」
 消えいりそうな声で大樹の枚挙を制止する。まだあるんだが、と首をすくめる大樹に、もういらない、と返して、正史は熱を帯びた頬を両手で隠した。
「ところで、そっちはどうなんだ? ここに来たときは死にたくなるくらい、彼女に振られたのがつらかったんだろう?」
 ぐっと距離を詰められ、思わず目をそらす。
「そんなに好きだったのか」
「だから、彼女への思いは、なんていうか、恋愛感情とかじゃなかった、と思う」
 今現在、大樹に対して抱いている思いとは明らかに違う、安定した義務的な愛情だった。
「でも、死のうとまでした」
「だから、それは、ノートの……」
「ノート?」
「内容を、守れなくなるから」
 怒ってはいけない、嫌ってはいけない、恨んではいけない。
 彼女に別れを告げられたこともショックだったが、なによりそれによってノートの内容を遵守できなくなることに絶望していたのだ。
「は? そっち!?」
 今となっては十分おかしなことだとわかっている。でもそのときは緊急事態でパニックに陥っていたから仕方なかったのだ。必死で自分はおかしな人なんかじゃない、いたってまともなのだと説明したのに、大樹は空を仰いで大笑いしだした。
「あのノート、すごい威力だ!」
「だって! ずっと昔から、守ってきたことだったから!」
 大きな笑い声に消されないように、大声で過去の自分の行動を正当化していると、ふわっと温かい香りが正史の体を包んだ。
「でも、俺が海に捨てた」
 肌身離さず持ち歩いていたノートは、今では、死んではいけない、とだけ書かれた表紙しか残っていない。
「きみには、感謝してる。僕を根底から変えてくれた」
「感謝、だけか?」
 抱きしめる手を緩めて、大樹が顔をのぞきこんでくる。閉じられた口は口角があがって微笑んでいるように見えるのに、強い光を放つ目には彼の本気が滲んでいた。
「俺が結婚すると思って、結婚式なんて失敗してしまえって、言ったんだろ? 彼女に贈ろうとしたこの指輪の存在を忘れるくらい、あなたは夢中だった」
「そ、れは…………」
「言えよ」
 追いつめられて、心臓が壊れたみたいに早鐘を打つ。高慢なセリフに逆らえない。悠然とした面持ちからは想像できない強い意志が、たったひとことの命令にこめられている。
 大樹はきっと、気づいてる。
 正史の千佳子への思いが断ち切れていると知った今、正史が大樹のことをすごく欲しているということを。
 怖いのに、魅惑的な光を放つ瞳から目が離せない。こんなに近くで見つめられるとたまらなくて、もうどうにでもしてくれと言いそうになる。心の奥深くにひそめた自分の思いを、根こそぎ引っぱりだされる恐怖に怯えながらも、気持ちを伝えずにはいられない、その衝動を止められない。
「好きだ。きみが、好きでたまらない」
 のどが震えて、声がひきつる。緊張で赤くなった顔を俯けようとすると、あごを指先ですくわれた。
「俺に抱かれたいと、言え」
 調子づいて、と言おうとしたが、ふたたび目が合った瞬間その言葉は引っこんだ。美しい獣は、色の含んだ強い視線を向けながら、正史の返事を行儀正しく待っている。
 いつもそうだった。大樹は野生児のように奔放なくせに、必ず正史の気持ちを尊重してくれた。ずっと性行為の一線を越えなかったのは、正史の中に千佳子への気持ちが残っていると思っていたからなのかもしれない。
 手加減されていたのだ。正史の思いが百パーセント自分に向いているとわかるまでは。自ら鎖を外した獰猛な野獣を前にして、食われる恐怖と食われたい欲望の狭間を彷徨う。夕日を背負った大樹は決してさきを急かさず、ただ怖いくらい本気の視線を正史に突き刺してくるだけだった。
「もう……」
「ん?」
 首を傾げて見せる悠然な態度が、もういっそ腹立たしかった。
「だ、抱いてくれよ!」
 正史の気持ちなんてとっくにわかっているくせに、どうしてそっちから仕かけてこない。出会った日のように、無理やりしてくれたほうがまだましだと思った。
「よく言った」
「えらそうにっ……、ん」
 口づけられて、言葉の語尾を吸いとられる。すぐに口内に潜りこんできた舌が、ゆったりとすみからすみまで舐めつくす。後頭部を撫でていた大きな手が、うなじをすべってシャツの襟をつまんだ。
「ん、ふ……、ンぁっ、なーっ!?」
 そのまま前に回ってきてボタンを外そうとするので、正史は目の前の顔を押しのけ、その手をつかんで止めさせた。
「こ、ここで、するの?」
「ああ、前に一度しただろ?」
「誰か来たら、どうするんだ」
「誰も来ない。ここは俺のプライベートビーチだから」
「へっ? プライベート、ビーチ?」
 正史は目を白黒させて辺りを見回した。
 無人だ。それはそうだろう。正史が自殺場所に選んだビーチは大樹の持ち物だったのだ。たしかに、今日は大樹の案内による正規ルートでここまでやって来たが、初日にひとりでここにたどり着いたときは、舗装されてない道を通り、すすきを手でかき分けてやって来た。大樹が全裸で泳いでいても誰にも咎められないわけだ。自分とあまりにかけ離れた世界の話を聞いたせいか、正史は頭がくらくらしていた。好きになった男がビーチを所有しているなんて。
「と、とにかく帰ろう。僕みたいに迷いこんでくる人がいるかもしれないから」
「こんなへんぴな場所にある私有地、正史以外誰も入って来ない。だからするぞ」
「いやだ。外でなんかもう無理!」
「まだ抵抗するか」
「こんな明るい場所で、恥ずかしいんだよ!」
 正直に告白すると。
「今更」
 ふっと笑って正史の腕をつかんだ手をほどき、大樹は細めた目をギラリと光らせた。
「観念しろ」
「うっ………………」
 有無を言わさぬ迫力ある視線と一言に、正史は突っかかることをあきらめてしぶしぶ頷いた。赤い頬を両手で隠しながら、いざなわれるままに砂のベッドに転がって見上げると、夕日を背負った大樹が、子供みたいな顔ではにかんだ。





リゾート・ア・ゴーゴー(7)

 携帯電話に知らない番号から着信があった。かけ直すと千佳子が出て、正史は消去した彼女の電話番号をまったく覚えていない自分自身に驚いた。
「正史、ほんとに、ありがとうね」
 呼びだされて出向いたバーで、カウンター席に座る彼女の隣に腰かけると、千佳子が唐突に言った。
「ありがとうって、なにが?」
 尋ねたら笑顔が返ってきただけで、ありがとうの意味については教えてくれなかった。
 甘いお酒を飲みながら、とりとめのない会話の途中。今日の昼間、タクシーの前で大樹となにをしていたのかと、何度か尋ねようとした。だけど聞いて真実を知る恐怖から、正史はそこに踏みこむことができなかった。それでもやはり気になりすぎていたため、目線はカクテル・グラスの脚をつまむ千佳子の左手薬指の大きなダイヤモンドを凝視してしまっていたらしく、マティーニを一口飲んだ彼女はグラスをおいて、照れたように笑いながら右手できらめく宝石を隠した。
「派手すぎるから困ってるんだけど、彼がこっちに来てるあいだはつけておけって。結婚指輪はこのさき毎日つけるものだから、シンプルなのにしてってお願いしたんだけど」
 昼間に見た映像を頭の中に呼び起こす。大樹がつけた指輪は確かに今、千佳子がはめているものよりずっとシンプルだった。今目の前にある豪奢な指輪も昼間に覗き見たシンプルな指輪も、彼女に頼まれて大樹が準備したものなのだと考えたら、胸の中が焼け焦げそうになった。千佳子に振られて呆然としていた自分が、たった二か月後に彼女に強い嫉妬を抱いているのがなんだかおかしかった。平凡と予定調和を好んでいたのに、大樹に出会って彼に惹かれて、激しく心を揺らしている。
 これは罰なのかもしれない、と思った。
 三年間、ちゃんと愛そうとしてくれていた千佳子と向き合いもせず、自分の都合だけで結婚を申しこんだ男に神様は雷を落とした。心がしびれるような強烈な感情を知って初めて、正史は千佳子が自分を拒絶した理由をはっきり理解した。
 彼女は恋をしたのだ。話しかけても響かない、ノートの内容を遵守することで頭がいっぱいの上の空の男に嫌気がさして。それは短期間で結婚を決めてしまうほどの、強く熱い思い。正史は千佳子の恋心に激しく共感した。自分も彼女と同じように大樹に恋しているのだと、もうはっきりと認めるしかなかった。
「僕はきみを、祝ってあげられないかもしれない」
 偶然会ったときは素直におめでとうと言えたのに、相手が大樹だとわかった途端、嫉妬で祝福どころではなくなってしまった自分の心の狭さがいやになる。
「どうして?」
 千佳子が不思議そうな顔で見つめてくる。
 正史はその疑問に答えることができず、歪んだ微笑みで千佳子に別れを告げ、二人分の会計を済ませるとひとり店を出た。

 夜道をあてもなく歩いた。家に帰って大樹と顔を合わすのが怖くて、ぐるぐる同じ道を行ったり来たり。だけどその単調な作業のせいで、頭の中には考えたくないことばかりが浮かんでくる。二人はお互いをどんなふうに呼び合ってるのだろう、とか。大樹は千佳子になんと言ってプロポーズしたのだろう、とか。安易でくだらない想像が、自分の心にプスプス突き刺さる。やめればいいのに。だけどどうしても帰りたくなくて、正史は不本意な夜の散歩を三時間も続けた。
「どこに行ってた?」
 無駄な時間を過ごしてまで帰宅を遅らせたというのに、扉を開けたら大樹がいた。玄関脇の壁にもたれて腕組みしている不機嫌な男を見つけた瞬間、思わずため息がこぼれた。
「どこだっていいよ」
 壁から離れ、通路をふさぐように立ちはだかった長身の脇を無理やりすり抜けようとしたら、二の腕を強くつかまれた。
「彼女と会ってたのか?」
 どうして知っているのか、と聞くまでもない。大樹は婚約者である千佳子から今晩、正史と会うということを聞いていたのだろう。見下ろしてくる目には、怒りと悲しみが混じったような不思議な色が滲んでいた。彼女と二人きりで酒を飲んでいた元恋人の存在を許せないのかもしれない。ひるまないようにらみ返し、拘束から逃れようと体をよじったら、壁に背を押しつけられてキスされた。
「ンっ…………、ゃ、めてっ!」
 胸をこぶしで押し返す。いったん離れた唇がまた近づいてくるので、正史は大樹の頬を手のひらで思いきりはたいた。
「い、ってぇー……」
「な、にするんだっ」
 目に自然と涙が浮かんでくる。喉が引きつりそうになるのを必死でこらえながら、正史は肩で激しく息をした。
 婚約者の過去の恋人の存在が、そんなに許せないのだろうか。それなら殴ってくれればいいのに。惚れさせて、気持ちよくさせて、とろけさせて、最後に地獄に落とそうという魂胆なのだろうか。
 でも自分が知ってる大樹はそんなことをする男じゃない。一緒にいたのはたった二か月ほどだが、大樹は正義と自信にあふれた太陽のような男だった。卑劣な手を使って人を貶めるようなことなどしない。そう信じたい。信じたいのに、頭の中に何度も何度も大樹が千佳子の手を取って指輪をはめる映像が浮かんでは消え、また浮かび上がる。正史は相反する二つの考えにはさまれて混乱していた。
「まだ彼女のことを、忘れられないのか」
 正史には大樹が、千佳子のことを忘れろと言っているようにしか聞こえなかった。彼女についた過去の手垢を根こそぎ落とすように、自分の気持ちを払拭させようとしているのだと。もしそうなら確認なんかしてくれなくても、千佳子のことなんてすっかり忘れていたのに。大樹に出会って振り回されて、すごい勢いで惹きつけられて。千佳子のことなんて顔を見るまで頭の中から消えていたのに!
 自分の信じたい大樹が、信じられないことばかり言う。大樹は、正史が完全に千佳子を忘れることを望んでいるようだ。数日後、自分の隣に並ぶ花嫁の不快な過去を抹消してしまいたいらしい。それほど千佳子を愛しているのだろう。
 嫉妬に狂って妄想をエスカレートさせた正史は、思わず暴言を吐いてしまった。
「結婚式なんて、失敗してしまえばいいんだ」
 口から出てきたおぞましい言葉に、自分自身で息をのむ。目を見ひらいた大樹の顔から怒りは消えて、深い悲しみの色だけが浮かび上がってきた。
 軽蔑されたのだ。絶対言ってはいけない言葉だった。これで大樹に完全に嫌われてしまう。恐怖で噛み合った歯がガタガタ震えだす。
 俯いた途端、革靴に水滴が落ちた。大樹が近づく気配がして体をこわばらせると、大きなぬくい手が頭にそっと乗っかってきて、ひどく優しい手つきで髪を撫でた。
「もう、忘れろ」
 最後通牒が下された。千佳子のことを忘れろと。
 告げた内容とはちぐはぐの甘い声と手の優しさが残酷だと思った。これ以上惚れさせて、大樹はいったいどうするつもりなのだろうか。
「さわら、ないで」
 心地いい大樹の手の感触から逃れ、正史は涙に濡れる頬を乱暴に拭うと、帰ってきたばかりの部屋から出ていった。


 結婚式当日は、見事な秋晴れになった。
 澄んだ空気の中、波音に混じって幸せの鐘が鳴り響く。きっと今頃は、千佳子の薬指にあのシンプルな結婚指輪がはまり、誓いのキスをしている頃だろうか。
 正史は清掃後の客室の最終チェックを済ませ、ため息を吐いた。幸せそうな大樹と千佳子の姿を想像しながら、勝手に滲み出てくる涙を拭う。朝からずっとそんなだから、充血した目の周りの皮膚がひりひりと痛んでいた。
 もう忘れろ、と言われて正史が部屋を飛びだした翌日から、大樹は家に帰ってこなくなった。始めは正史自身が外泊することを考えたが、商業施設の少ない島でほかのホテルに泊まるのも気がひけ、野宿するほどの勇気もなく、夜半に気まずいまま家へ戻ったのだけど、そこに大樹の姿はなかった。大樹がいないことにほっとしていたのは最初の二日ほどで、ひとりの夜が増えていくにつれて、どうして大樹は帰ってこないのだろう、と考えた。不安に苛まれ、大樹のクローゼットを開けた。そこに何着か吊るされていたスーツの類がごっそり持ち去られていた。箪笥に下着やTシャツもない。もともと物が少なく、装飾品などもない部屋(大樹も寝るだけの空間と言っていた)で、日常使う衣類が欠けると、家具や食器以外の大樹の私物はほとんど無くなってしまった。
 自分は取り残されたのかもしれない、と正史は思った。結婚式を数日後に控えた大樹は、千佳子と二人、一足先に新居で甘い新婚生活を送っているのかもしれないと。妄想の針は決してプラス方向には振れず、考えれば考えるほど辛いイメージで脳内が埋めつくされた。食事は喉を通らず、噛むことすら面倒で水分でばかり栄養を取っていたから毎日涙が流れた。二人で眠ったキングサイズのベッドで枕を濡らす日々が何日か続いた。そんな中でも日中はどうしても職場で大樹と顔を合わしてしまう。気まずさと悲しみでよそよそしくなってしまう正史を前にしても大樹の態度は以前と変わらず、というよりむしろ、より優しくなっていた。顔色が良くないと言って額に手を当ててきたり、痩せすぎだからちゃんと食べろと、自社農園で作ってる色とりどりのフルーツを帰りに持たせたりする。だけどそんな気づかいとは裏腹に、大樹は決して家に帰ってこようとしない。その線引きが、正史に気づかせる。大樹は正史がスイートルームに泊まった初日、代金を支払うと言ったら、身体と引き換えで構わないと言った。だから今、正史に与えられる優しさや、カラフルな色のフルーツや、取り残されたひとりぼっちの家は、もしかしたら正史の身体に触れたぶんの、大樹から与えられる最後の代償なのかもしれないと。
 目に浮かんだ涙を、また乱暴に拭った。おいしいフルーツと大樹のいない家。これで納得しなきゃいけないんだ。そう無理やり自分を説得しようとしても、体が拒否反応を起こしてるみたいに涙がとめどなく溢れてくる。
 なんて自分勝手なんだろう、と思う。きっと失敗人間だから、素直に人の幸せを喜べないんだ。
 付き合ってるあいだずっと、千佳子と向き合おうとせず、三年もの大切な時間を無駄にさせてしまった自分が、やっとつかんだ彼女の幸せを祝福してやれないなんて間違ってる。そう頭ではわかってる。彼女の結婚相手が自分の惚れた相手でも、祝福しなければならないことくらい。だけどそう思う気持ちの反対側で、どうしても大樹を自分のものにしたいと心が叫んでいる。
「おめでとうって、言えない」
 鍵をかけた客室の扉の前で、ボソリと呟く。正史には、嘘で塗り固められた祝福の言葉を、二人に告げることなんてできそうになかった。自分の本当の気持ちを大樹と千佳子に伝えたいだなんて、失敗人間だからこんなこと考えてしまうんだろうな。でもきっと、今を逃したら一生言えないから。このさきずっと、不自然な笑顔を顔に貼りつけたまま、二人と会うのは嫌だから。
 気づいたら走りだしていた。右手にダスターを握りしめ、客室フロアからロビーへ。階段を駆け下り、フロントを横切って玄関扉から外へ出た。
 快晴の秋空。見事な結婚式日和。こんな穏やかで幸福な日に、自分はなにをしでかそうとしているのか。でも足は止まらない。ホテルの裏側から続く緩やかな一本道の上り坂を駆け上がる。小高い丘の上に立つ、小さな教会へ。たどり着いた頃には、ここ最近の不摂生がたたってもうヘトヘトだった。
 頂上には紙吹雪が宙を舞っていた。扉は開け放たれ、親族に祝福されながら新郎新婦がちょうど、チャペルを出てくるところだった。
 全力疾走で息は切れ、疲れきっているのに汗は噴き出てこない。そのかわりに目からは大粒の涙がぼたぼたとこぼれ落ちていく。正史はゆらゆら怪しい足どりで、人の輪の中央にいる新郎新婦らしき二人組に近づいた。
 伝えるだけ、伝えるだけ。
 決して二人を不幸にしたりしません。
 大樹が好きだと伝えて笑い者になるだけ。気持ち悪がられるだけ。絶縁されてしまってもおかしくないけど、もう言わずにはいられない。だって今しかチャンスはない。ここでおめでとう、って嘘の笑顔で言ってしまったら、このさきずっと本当のことを言えない。
 だけど、正史の願いは叶わなかった。
 幸せの輪の中央まであと数歩というところで、背後から肩を掴まれ、止められてしまったのだ。怪しい人間がフラフラと蛇行しながら新郎新婦に近づいていたから、警備員が止めに入ったのだろうと思った。望みが絶たれ、掴まれて強張った肩をしゅんと落とす。涙のあとをダスターで拭って振り返ると、そこにはなぜか大樹がいた。
「あれ……?」
「帰るぞ」
 無表情で告げると正史の手首を掴み、大樹は正史が今来た道を戻り始めた。すごい勢いで引っぱられながら、背後を振り返る。大樹はあの輪の中の千佳子の隣にいるはずなのに。新郎新婦を囲んでいた人の群れが一斉に動き、方々に散らばった。場所がひらけると、千佳子が引っぱられながら坂道を後退していく正史に気づいて手を振った。三、二、一のかけ声のあと、小ぶりな花束が空に高く上がる。人が掃けたのはブーケトスが始まる合図だったようだ。スカイブルーの空に弧を描いたオレンジ色のブーケが、気づいたら目の前に落下してきて慌てて手を伸ばした。おかしなところへ飛ばした千佳子に親族たちから笑い声とともに拍手が送られ、正史に向けてウインクする彼女の隣には幸せそうに笑う見知らぬ男性が立っていた。





プロフィール

りんこそ

Author:りんこそ
宗川倫子(そうかわりんこ)
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