カカオ様評価シート

こんばんは~
昨日の記事に拍手をくださった方、ありがとうございますm(__)m

数日前、カカオ様から『つなげて、お守り』のお話の評価シートが届けられましたので、一部公開させていただきます。なにかの参考になれば嬉しいです。

総合評価はC+でした。前回と一緒です。
ご指摘いただいたところを、いくつかざっくり挙げていきます。

攻がキャラクター的に掴みどころがない、エピソードのつなげ方に流れがなく唐突、恋愛面において展開が急、再会愛のテーマに中盤以降触れられていない、といった感じです。

ここには抜粋しておおまかに書きましたが、かなり細かく(欄外まで!)丁寧に指摘していただきましたことに愛を感じました(勝手に)

エピソードのブツ切れ感は、以前にも指摘されたことがあるのですが、これはプロットの時点で作り過ぎていることと、本文を書く時急ぎ過ぎていることが合わさって、うまくいっていないせいでしょうか。いや、そもそもプロットの時点で問題があるのかなぁ。

実は自分の書くお話はいつも心情の流れを重視しすぎて、物語の飛躍力が足りないと思っていたのですが、どうやらそもそも地に足がついていなかった!という衝撃の事実発覚であります。Σ(゚д゚;)ギャーン!
もしかすると派手にしようという気持ちが空回りして、細部がおろそかになっていたのかもしれません。場面のつなげ方についても考えていかないと……。

ほかの点についても考えたいのですが、ちょっと頭が今ぐるぐるで(だいたいいつもそうじゃん)、とりあえずしばらくこちらのシートは寝かせて、またゆっくり読み返しつつ自分で反省してまいりたいと思います。

とにかくテーマは大事。
そしてカカオ様の次回締切がもうすぐじゃないですかぁ! わたし時間の使い方へたくそかっ(セルフビンタ)

がんばります。
ではまた☆彡


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9/29(火)よりCharade新人小説賞

こんばんは~

つなげて、お守りを読んでくださった方、拍手をくださった方、コメントをくださった方、みなさま本当にありがとうございます!
明日のブログに、カカオ様からいただいた評価シートの一部を公開させていただきますので、チェックしてくださると嬉しいです♪
ほかのお話に拍手をポチポチくださった方も、本当に本当にありがとうございますm(__)m

そして今日はひとつご報告が……。
ななななんと! ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、9月29日(火)よりCharade新人小説賞様で、拙作が連載されます!
タイトルは「スクリーンを突き破れ!」でございます。

あらすじなども読めますCharade様ホームページはこちらです。

たくさんの方に読んでいただきたいです!
ので、しばらくブログは宣伝の場と化すと思われます(宣伝部なるカテゴリーまで作ってしまいました・・)

Charade新人小説賞様は毎週火曜日に新しいお話が出ますので、その時に合わせて雪山で眠りかけたみなさまを揺すり起こす勢いで宣伝活動に邁進していきたく思っております。
もうわかってるよ、という方にはしつこいブログになってしまいますが、2か月強ほど、この宣伝女にお付き合いくださると嬉しいです。よろしくお願いいたしますm(__)m

そして、ご一緒してくださるお二人の方もよろしくお願いします! 

ではまた明日☆彡


Charade新人小説賞様→>http://upppi.com/ug/sc/page/charade.html

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つなげて、お守り(15)R-18【終】

 自分ですら触れたことのない身体の空洞に指を入れられて、痛いとか気持ち悪いとか変な感じがする、とか感想を伝えていたのはほんの数分程度だった。そのあとはもうとぎれとぎれの甘く上ずった声しか、僕の喉からは出てこなくなってしまった。
「ひ、ぁー……っ、んっ」
 ベッドに膝をつき、枕に突っ伏した姿勢で、慎さんに弄ってもらいやすいようにお尻だけ高く掲げる。背中から覆いかぶさる慎さんが激しく指を出し入れしながら、空いた左手で乳首をつまんで捏ね回してくるから、気持ち良すぎてお尻をゆらゆら揺らしてしまう。

「あ、あ、そこばっかり、ダメっ」
「ここ、好きだろ?」
「あんっ、だから……、そこ、あァ……、へんに、なるからぁ……っ」
 内側からきつく圧迫されると、おしっこと精子が一緒に出そうになるようなおかしな場所があって、どんなにだめって言っても慎さんはそこばっかり責めてくる。
「変になれよ」

 柔らかい声で命令されるとぞくぞくした。ずいぶんさっきから触れられていない性器はずっと勃ちっぱなしで、そんな状態を慎さんに見られてると思うと恥ずかしいのに気持ちいい。見えない自分のお尻に慎さんの指が何本入ってるのか、どんなふうにいじくられているのか、さっぱりわからないけどとにかくもう射精したい。どうにかしてほしい。
「慎、さん……」
 枕から顔を上げ、振り返ってお願いする。
「もう、あの……、入れて」
「なにを?」
 知ってて聞く、その細めた目元が恐ろしいほどに色っぽい。
「慎さんの」
「これ?」
 ころん、と身体を仰向けにひっくり返され、慎さんの手の中にある猛り立つ性器が目に入ってくると、ぼうっと火照っていた頭の中が冷静な思考に切り替わる。
 あそこにあれが入るの?

「無理無理無理」
 両手を振って拒んでいると、上から圧しかかられた。
「ここで無理とか、俺のが無理だっつの」
 足を持ち上げられ、抵抗もむなしく股のあいだに腰が入ってくる。
「そんなおっきいの、入んないよぉっ、だめっ、あ、こら、ぁ……」
 グッと入口に先端を当てられてぞくっとした。単純に怖いと思う気持ちと、もし入っちゃったらどうなるんだろう、って思う好奇心が半分半分。

「あー…………、あ、あ」
「痛くしねぇから、力抜け」
 優しい手つきで僕の髪を撫でる慎さんの真剣な表情を見つめながら、ゆっくりと侵入してくる塊を全身で意識する。慎さんのものが僕の中にいる。まだ半分? もうどのくらい? 考えてるうちにも、ゆっくりゆっくり奥へ入りこんでくる。
 目の前の慎さんのおでこから、玉の汗が今にも落ちそう。じっと見つめていると、気づいた慎さんと目が合った。物欲しそうに見えたのか、キスされた。離れていきそうな唇を求めて思わず舌を差しだしたとき、下半身のほうをグッと押し進められた。
「は、んっぁ」
 驚いてしまって唇が離れる。
「悪ぃ、痛かったか?」
「だいじょ、ぶ」
 答えたらまた唇がくっついてきた。なにか待ってるみたいだったから、再びそっと舌を差し入れてみると、唇を繋いだまま慎さんがふっと笑った気配がした。積極的な僕の行為が嬉しかったのかもしれない。

「んっ、ふぅ……、ひっ、ぃ……」
 キスは解かないまま、性器をゆっくり抜きだされる。お尻の内壁をこする硬い感触にゾクゾクしながら、差しだした舌を吸われるとおかしくなりそうだった。ゆっくり入ってきて、抜けるぎりぎりまで出てゆく。角度が変わり、気持ちのいい場所を硬い先端が抉るように通過していくと、息苦しさに離れた唇から、鼻にかかった甘い声が漏れてしまう。
「あぁーっ! あ……、あんっ」
 慎さんが抱えた僕の足を持ち直したため、猛った性器がさらに奥まで入ってきた。半分に折られた身体は慎さんの頑丈な胸の中にまとめて収まった。
「だ、め。おく、ふぅ、あ……っ、」
「痛いか?」
「いっぱいで、ちょっとだけ、いた、いの……、あ、すき、変になる、かも。あんっ、きもちいいっ……、ぁあっ、んっぁ、ああー、あ」
 いちばん奥を硬い先端で何度も何度も突かれると、だんだん頭の中がぼんやり霞んできて、譫言のように勝手に言葉が溢れだした。

「かわいいな、おまえ。ぺらぺらしゃべって」
 しゃべりすぎ?
 冷静になりかけた僕を見て、慎さんが眩しそうに目を細めて笑う。なんてかっこいいんだろう。僕のとろけた表情や反応を見ながら、慎さんは徐々に大胆に腰を動かし始めた。
 強く、弱く、大きく、小刻みに。
 動きに予測がつかないから翻弄される。でもどうされても気持ちよすぎて、喉から漏れる声が抑えられない。
「だ、めっ、アンッ……、ヤっ、ぁっ……、っふあ……」
 ダイナミックに腰を使う慎さんに見惚れる余裕ももうなかった。激しく揺らされるままに身をゆだねるだけ。
「も、いっちゃう……、いっちゃうよっ」
「あんま、絞めんなって」
 慎さんは苦しげに眉を寄せたけれど、密着した慎さんの硬い腹筋に先走りが滴る性器がこすれて、こっちはもう限界だった。思わず慎さんの首に腕を回す。余裕なんてひとつもないのに、奥を集中的に突かれて朦朧としながら、僕はふと、昔の慎さんを思いだしていた。

 海の中でしがみついた薄っぺらい背中。懐かしい大切な思い出。すっかりいい男に変わってしまった彼に、今抱かれてるなんて。
「なに笑ってんだよ」
「ぁんっ」
 無意識に笑顔になっていたらしい。乳首を指先で弾かれてまた変な声を出してしまった。
「好き」
「なんだよ、今さら」
 今度は慎さんがふっと笑う。その色っぽい笑顔が真顔に変わるのを見届けてまもなく、長引く快感の波に襲われた。


『ほんっとにごめん! あたしのファンが酷いことして。志紀、けがはなかった?』
 耳に押しつけた携帯電話から晴香の泣きそうな声が聞こえてくる。
「ぜんぜん平気。けがとかしてないし。晴香はなにも悪くないよ。僕が不用心だったのがいけないんだから」
『無事だったんだね。よかったぁ、そのひとことが聞けて』
 まだ眠りの中にいる慎さんを寝室に残して、朝の光射すリビングスペースで晴香にメールを送ると、すぐさま電話が鳴った。これから写真集の撮影でバリ島に向かうらしく、飛行機が飛ぶまでの時間、空港のラウンジで暇を持て余していたのだと言う。
『安心したから心置きなく聞くね。昨日の夜に電話しようと思ったんだけど、お邪魔しちゃ悪いかなー、って思って遠慮したんだ。これでよかったんだよねぇ?』
「うー、うん……、あ、ありがと」

 晴香の声が謝罪モードから一転、好奇心に満ち溢れたものに変わる。
 晴香は昨晩、僕との通話が突然途切れたあと、最後に聞き覚えのない男の声がしたため、心配になって僕のマネージャーに連絡したらしい。事件が解決したあとマネージャーから折り返された電話ですべてを知らされた晴香は、僕のことを心配しつつも恋愛が成就することを祈ってくれていた、らしいのだけど。
『ねえねえどうだった? 気持ちよかった?』
「なに、言ってるの」
『最後までしちゃったわけ?』
「い、言わない」
『言いなさいよ。痛かったの? 気持ちよかったの? お姉さまが美味しいお寿司おごってあげるから、今度くわしく話聞かせなさい』
「たった一歳しか違わないのに、エロオヤジみたいなこと言わないでっ」
「誰?」

 ソファーの隅っこで小声で話していたら背後から声をかけられて、びくっと全身が縦に揺れた。
「あ、晴香」
 振り返って素直に答えると、ふーん、と眉を上げて答えたあと、寝起きの慎さんが僕の手を取って引っぱった。
「な、なに?」
「一緒に風呂入ろうぜ」
「は?」
 衝撃の発言に、思わず携帯電話を取り落しかける。話の途中だったのであわてて持ち直し耳に当てると、興奮気味の晴香の声が届く。
『なんてなんて、彼氏なんて?』
「な、なんでもないよ。そろそろ切るね」
 慎さんの冷たい視線に背中を向けて晴香に伝えると、嫉妬深い彼氏によろしく、お風呂楽しんでね、となにもかも見透かした言葉を最後に通話が切れた。

「斉木晴香、なんの用だったんだよ」
「心配してかけてくれたんだよ」
「へー」
 大人げない返事に思わず笑いをこぼすと、隙をつかれてキスされる。なかなか解放してくれなくて真っ赤な顔で胸を叩くと、満足したのか、野生の獣みたいに濡れた唇を腕で拭って宣言する。
「おまえは俺のもんだからな」
 嫉妬深い彼氏の確認にうなずいて、僕は赤いにやけ顔を隠すため、慎さんより前に出て、大股でバスルームに向かった。


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つなげて、お守り(14)

 立ち上がった慎さんは冷蔵庫からミネラルウォーターを取りだしてガブガブ飲むと、またソファーに座る僕のもとへ戻ってきた。
「おまえは俺のことを買いかぶってんだよ」
 大きな手が近づいてきて涙で濡れた顔を拭うと、ペットボトルを手渡された。泣いたぶんの水分を補給しろと言われた気がした。

「十年前、海で助けたガキがテレビに出てるのを見つけたときは、驚いた」
 再びソファーに腰かけた慎さんが、ジーンズのポケットから取りだしたくしゃくしゃの煙草に火を点けた。
「始めのうちは、おまえが画面の向こうで笑ってんの見て、元気にしてんだなぁ、頑張ってんなぁって確認してただけだった。無邪気でまっすぐで、こんな純粋なやつが芸能界でやってけんのかなって思いながら一年も見続けたら、俺はすっかりおまえのファンになっちまってた。高校生の男がさ、小学生男子が出てる子供番組やドラマや映画をかかさずチェックしてんだぜ。まずいだろ」
 同意を求められて首を横に振る。全然まずくなんかない。ただただ驚いていた。慎さんが僕のファンだったなんて。

「『松井式散歩』がうちの製作所に取材の申し込みに来て、すっげぇわくわくした。だけど本物の志紀に久々に会えるのが楽しみすぎて、一睡もできねぇし、腹壊すし。そんな悲惨な体調の俺の前で、愛しのおまえは終始なにかにビクついてて全然楽しそうじゃねぇし」
「愛し……」
 その単語に照れてると、めんどくせぇとこで引っかかんな、と頭を小突かれる。
「取材が取り消しになった次の週に、おまえはマネージャーもつれず、たったひとりで謝りに来た。仕事終わりに刃を研いでたら扉がひらいて、夕暮れのオレンジ色に染まったおまえが怯えたような顔して後ずさるのが見えた。だけどそのあとちゃんと一歩前に進んで、俺の顔をしばらく見つめたあと、すみません、って頭を下げたんだ。気持ちの伝わってくる謝罪だった。おまえの誠実さが嬉しかった。ずっとファンだった芸能人の松井志紀は、あの瞬間どこかにいっちまった。画面を通さない生身の松井志紀という人間と、もう一度ちゃんと触れ合いたいって思ったんだよ」
 慎さんの持つ煙草のさきからくゆる煙を見つめながら、夢みたいな話を聞いていた。僕が慎さんを好きになるほんの少し前、慎さんは僕を意識してくれてたみたい。

「十年前、海で助けたときの話をしたとき、まずいなって思ったよ。おまえ目キラキラさせてさ、ああこれ運命だって思ってんなって」
「それのなにが、いけないの?」
 運命であることが嬉しくなさそうな慎さんにしょんぼりして尋ねると、おでこを指先ではじかれた。
「そうやって憧れられても困るっつの。命を救ってくれた運命の人、とか思われてる横で、むちゃくちゃエロいことしてぇなって考えてる俺が居たたまれねぇ」
「な、にそれ」
「子役のころから知ってるだけに、ただでさえ罪悪感がはんぱねぇんだ。だけどな、よく聞け。俺は志紀とあんなことやこんなことをしてぇんだよ。おまえが憧れてる運命の人は、緊張したら腹も壊すし、好きなやつが女と噂になったら焦るし、姉貴を恋人と勘違いして嫉妬で泣いてるおまえ見て、かわいいなって思いながら安心してるような、低級で大人げない男なんだよ」
 やけくそのように言い放つと、慎さんはほとんど吸ってない煙草をガラスの灰皿でもみ消して、僕の肩を両側から力強く掴んだ。
「過去の幻想にとらわれて、盲目的に求められるのがいやだった。ちゃんと今のおまえの目で、今の俺を見ろよ」
 目の前のどアップの慎さんが、真剣な顔で見つめてくる。
「俺は、今のおまえが好きだぜ」

 慎さんがそう付け足すのと、僕が頷くのは同時だった。ちょっと不思議な間が空いて、二人同時にふっと笑った。
「僕も好き。慎さんが好き。お腹壊しても、エッチなこと考えてても、優しくても怖くても、変わったところも、変わらないところも、慎さんの全部が好き」
 心のままを伝えると、慎さんの表情は安心したように柔らかくなった。
「でもなんで、昨日僕が告白したときに返事をくれなかったの?」
「急いでたんだよ。俺の姉貴、週刊誌の記者なんだ。職業柄か好奇心旺盛で、風呂上がりに着の身着のままで飛びだしてったりしたら、身内の弱みでも握ろうと追いかけてくるようなところがあるからな。あんなとこ見られたらまずすぎる」
 衝撃の告白に固まっていると、慎さんのお姉さんは晴香と僕の記事を載せた出版社とは別のところで働いているが、仕事では芸能記事を扱っているのだ、と教えてくれた。

「昨日は姉貴がパソコン買い替えたんだけど、いらなくなった古いのをくれるっつうから届けてもらったんだ」
「慎さんが、パソコン?」
 携帯電話にすら興味がないのに。
「おまえと会ってないあいだ、ネットカフェに通ってた」
「ネットカフェ? なんで?」
「情報収集だ。松井志紀と斉木晴香の熱愛報道についてのな」
 驚きすぎて口すらひらかなかった。真顔でじっとしてる僕に、引くなよ、と慎さんは気まずそうに笑った。

「おまえんちに行っても報道陣だらけで当人はいねぇし、連絡先や泊まってるホテルは事務所が教えてくれねぇし、どうしようもなかったんだよ。でも結果よかったろ? 俺が掲示板見てたおかげで、変質者の逮捕につながったんだから」
「まさか掲示板に書きこんだりしてないよね」
「松井志紀は俺のもんだ、とか?」
 イ、と歯を見せて笑うので、思わず広い胸を拳で叩いてしまった。こんな色男がネットカフェでそんなくだらないことを書きこんでるなんて。そう思うのに顔はバカみたいに火照って、心臓がドキドキ高鳴ってゆく。

 もうどうしようもなく好きなんだ。慎さんがどんなに幼稚でもくだらなくてもかっこ悪くても。きっと僕が憧れてる過去の慎さん像を、慎さん自身が壊しにかかってる。そうやって今の自分を知れってアピールすることが、慎さんなりの求愛行動であることに気づいたら、すごく照れくさいのに心が満たされた。

「いい部屋だな」
 唐突に、不自然に、慎さんが部屋の中を見まわした。慎さんの視線が止まったさきに目を向けると、キングサイズのベッドがある。
「するか。せっかくだし」
 なにがせっかくなんだか。
 こんなにかっこいいのに、誘い方が下手くそなところも愛おしい。というか、慎さんってだけでもうなんでもよく見えるんだろう。

「僕、初めてだから、優しくしてください」
 真っ赤な顔で報告すると、マジ? と嬉しそうな顔で返事が来たので。
「慎さんは何回目なの?」
 困らせたくて、ちょっといじわるな問いを投げかけてみたのだけど。
「それ聞きてぇの?」
 楽しそうに笑う慎さんの顔が憎たらしくて、でも聞いてしまうとへこむ自分が容易に想像できるから知りたくない、と不機嫌に答えて差しだされた手を取った。
「僕のファンだったときも、ほかの人とエッチなことしてたんですね」

 思わず呟いてから気づいた。自分も慎さんをバカにできない。人を好きになると人間は、すごくくだらないことを口に出してしまうらしい。天を仰いでカラカラ笑ってから、慎さんは僕をベッドに横たわらせ、おでこに口づけた。
「愛してるから、許せ」
 本当は許したくないけど、そのまま唇をふさがれたから文句は言えなかった。角度を変えながら下唇を吸われ、引っぱられて、大きなぬくい手で髪を梳かれた。
「んふぅ……、っん」
 分厚い舌が唇をめくって口内に入ってくる。隠していた舌は容易く見つかって、慎さんの唾液をたくさん塗りこまれた。ゆったりと時間をかけて、確実にもたらされる官能に酔いしれる。つむった目の端が潤んでいたのか、指の腹で優しく撫でられて思わず慎さんのシャツの胸ぐらを掴んでしまった。
「んぁ、もう……、んぅ」
 長く甘い大人のキスが終わるころには、脳の中はしびれ、身体は緩みきっていた。

「許す気になったか?」
「んっ、な、にが?」
 許したくなかったことなどすっかり忘れてしまって、僕は楽しそうに笑う慎さんにされるがまま、服を一枚ずつはがされていった。


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つなげて、お守り(13)

「ところで、どうなってるんだ? きみたちの関係は」
 説教が始まると構えていたところに予期してない質問がきて、動揺で目が泳ぐ。
「どうって……」
「ぼくに隠れてこそこそ会ってたみたいだし、深町さんは今回の件で志紀のことを非常に心配しているようだったしね」

 マネージャーの話によると、一週間前に慎さんが事務所を訪ねてきたのだという。松井志紀の居場所を教えてほしい、と言って。
「なんで慎さんがそんなこと知りたがるの?」
「おまえんち行ってもいねえし、マンションの付近は芸能記者が張ってるし。知り合いに聞いたら熱愛記事が出て大変らしいっつうから、おまえはどうしてんのかと思って気になったんだよ。悪いか」
「悪くは、ないけど」

 そういえば、夜に抜け出して会いに行ったら、慎さんはホテルに帰れと促してきた。あのときは正気を失っていて気づかなかったけど、マネージャーに僕の居場所や今の状況を聞いて知っていたから、友人として心配してくれていたんだろう。
「単刀直入に聞く。きみたち二人は付き合ってるのか否か、それだけを答えてくれ」
 無駄が嫌いなマネージャーの質問に、黙ったまま首を横に振る。慎さんには彼女がいて、僕は単なる友人のひとりでしかない。
「そうなんですか?」
 僕の答えを目で確認したマネージャーは、今度は慎さんに答えを求めた。
「ええ」
 ソファーに座ったままゆったりと足を組み替えた慎さんは質問に簡潔に答えたあと、マネージャーから目をそらしてぼそっと呟いた。

「でもこれから付き合う予定」
「………………は?」
 すごく間が空いていたのに、マネージャーと僕の声は同時だった。
 これから付き合う予定?
「だ、だだだ、誰と誰が?」
「俺とおまえが」
「えええーっ!」
 驚きすぎて自分で耳を塞ぎたくなるような大声を出してしまった。
 いったいどういうこと? なにがどうなってるわけ? 慎さんには恋人がいるはずなのに。
 だけどそれは慎さんに確かめたわけでも決定的な現場を見たわけでもなく、状況から自分で決めつけた推測にすぎない。
 昨日、慎さんの部屋から聞こえてきた女性の声。彼女は慎さんの恋人ではないのだろうか。というか付き合う予定って、そもそも慎さんは僕のことが好きなの?

 ぐるぐる回る頭を抱えていると、マネージャーがぱん、とひとつ手を叩いた。
「まあいいです。そのへんの細かいところには干渉しない。ただひとつ、もし付き合うなら、うまく付き合ってくれ。誰にもバレずにやればいい。ただ少しでもおかしなことになったら交際は終わり。男同士だから普通にしてれば友人に見える。二人ともいい大人ですし、人目につく外でおかしなことしないかぎり問題ないでしょう」
 さらっと言って荷物をまとめ、帰ろうとするマネージャーを慌てて引き止める。
「え、あの……、そ、それだけ?」
「それだけだよ。うちは弱小だからね。若いタレントは志紀くらいだし、恋愛は基本的に自由。男同士ってリスクがあるから今回はまだ厳しいほうじゃない? 社長の大らかさといい加減さに感謝することだね。斉木晴香の事務所だったらこうはいかないんだから」
 それだけ告げると、あとはご自由に、と首をすくめてマネージャーは部屋を出て行ってしまった。

 二人きりで取り残される。広いスイートルームに慎さんと僕だけ。目の前にはキングサイズのベッド。昨日までは独り寝には広すぎて持て余していた代物が、途端に存在感を増して目に映る。
 俺とおまえが、付き合う予定。
 さっきの慎さんの言葉だけが、脳内をぐるぐる駆け回る。口の中に溜まった唾液をごくりと飲みこんで、僕はくぎづけになっていたベッドから慎さんに視線を移した。

「あの……、昨日、慎さんの家にいた女の人は、誰?」
「姉貴」
「おねえさん、いたの?」
 弟や妹がいそうな気がしてたから、上に兄弟がいることにちょっと驚きつつも、恋人じゃなかったという事実に胸のあたりがそわそわした。ああ、と答えた慎さんの声を聞いた途端、心がポン、と軽くなる。
「そうだったんだ! なーんだぁ」
 気が緩んで思わず笑い声をもらしてしまったけど、そんな僕を横目で見つめる慎さんは、なんだかとっても不機嫌に見えた。
「あ、あのね、昨日、夜道で取り乱してしまったのは、女の人が慎さんの恋人なんじゃないかって思って、勝手に勘違いしてたからなんだ、よね……」
 理由を話せばそうだったのか、と納得してくれて機嫌がよくなるかと思ったけど、慎さんは知ってる、とそっけなく答えてソファーから立ち上がった。

「おまえが嫉妬すればいいと思って、あえて姉貴だって教えてやらなかったんだよ」
「え…………?」
 とんでもないひと言をもらして、慎さんが僕の目の前にやってきた。
「そんなことより、なんであんな男をこの部屋に入れたんだよ」
 あんな男とは、ついさっき、気を失ったまま警察に連れていかれた刃物を持った晴香のファンのことだろうか。
「それは……」
「昨日、俺言ったよな。ホテル帰ったら部屋に鍵かけて、変なやつが来たらマネージャーに連絡しろって」
 剣呑な目で見下ろされて、思わず後ずさる。今日の慎さんはなんだか、あの最初の失敗に終わった刃物ロケのときと同じくらい怖い。
「客室係だって言うから」
「客室係がこんな夜遅くに部屋に来るかよ」
「だって、ボタンが」
「ボタン?」

 距離を離すぶんだけ詰められて、逃げるように慎さんの元から離れた。ローテーブルのそばに落ちている学生ボタンを拾って、機嫌をうかがうように慎さんに見せる。
「このボタン、覚えてる? 慎さんが昔、僕にくれたんだよ。海で助けてもらったあと、お守りにって」
 慎さんは昔から優しかったのだ。そんな大切な思い出を共有したい僕の願いは、慎さんの疲れきったため息で吹き飛ばされた。
「で、そのボタンと、あの変質者を部屋に入れたことと、どう関係あるんだよ」
 大きな歩幅でゆっくりと、近づいてくる。なにを言っても慎さんの機嫌は直らないみたい。焦って後退していたため、かかとがソファーの脚にぶつかってバランスを崩し、そのままストンと座りこんでしまった。慎さんが隣に腰かける。ソファーの隅っこに膝を抱えて丸まりながら、客室係だと勘違いして彼を部屋に招き入れるに至った経緯を説明すると、また隣から盛大なため息が聞こえてきた。

「おまえな、そんなくだらねぇもんのために、変質者部屋に入れて刺されかけてんじゃねーよ」
「くだらなくないもん! 僕にとっては命と同じくらい大切なものなの!」
「アホか。そんなこと言ってんなら返せ」
「いやだっ」
 長い腕が伸びてきたのでぎゅっと固く握りしめて背後に隠した。だけど慎さんは僕からボタンを奪おうとはせず、ソファーの背もたれに手をついて間近から目を覗きこんできた。

「さっきこの部屋に入ってきて、志紀が包丁を持つ男と一緒にいるのを見て、肝を冷やした。めちゃくちゃ腹が立ったし、めちゃくちゃ悔しかった。ボタンなんか欲しけりゃいくらでもむしってくれてやる。おまえの存在と同等に価値のある物なんてこの世にねぇんだよ。そんなあたりまえのこと、おまえ自身も本当はわかってんだろ」
 真摯に紡がれる怒りをまとった言葉に、心が震える。大切に思われてる。その喜びの反面、自分と慎さんの思い出に対する執着の温度差に気づかされる。
「なんとか言えよ」
 俯いて肯定の返事をしない僕に焦れたのか、慎さんは僕の顎を掴んで顔を上げさせた。
「おい……、なんで泣くんだ」
 こらえていた涙が一筋、左の頬をつー、とすべり落ちてゆく。困った顔になった慎さんをまっすぐ見つめながら、懇願する。

「あきれないで」
「え」
「くだらないって言わないで。わかってる。死んじゃったら元も子もないことくらい。慎さんに海で助けてもらって、僕は生きることの意味を知ったから。でもこの学生ボタンは僕にとって、失うのがつらい大切なものなの。ほかの人にとっては価値のないものだとしても、慎さんだけはあきれないで。くだらないって、そんなもののためにって、言わないで」
 一度も目をそらさず言いきった。言いきるまでにたくさん涙が出た。手のひらで拭ったさきからぼたぼた下に落ちて高そうなソファーに水の染みをいくつか作った。目の前の慎さんの全体像が水中で見るみたいに歪む。天を仰ぎ、しばらく動かずにいてから、髪を片手でかきむしるぐにゃぐにゃの慎さんが見える。

 はぁー、と疲れ切ったため息が聞こえた。たった今、あきれないでと言ったばかりなのに。
「まいった」
 なにが?
 そう思ったけどもう怖くて問えない。


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つなげて、お守り(12)

「ルカたんと、別れろ」
 あまりの恐怖に、腰が抜けて尻もちをついた。
「つ……、付き合ってません」
「じゃあなんで昨日、ホテル抜け出して会いに行ってたんだよっ」
「晴香に会ってたんじゃないです」
「嘘つくんじゃねぇっ」

 男はさっきの物腰の柔らかさからは程遠い怒声を上げ、包丁を僕の目の前で振り回した。脅しでやってるのか半狂乱になってるのかわからないから、怖くてたまらない。
「今だって電話してたくせに!」
「友達だから、電話はします」
「信じられるかっ」
 男は鋭い目つきで僕をにらみつけると、両手で柄を握りしめて勢いよく振りかぶった。

 刺される。
 咄嗟に目をつむった。刃が空を切る音がした直後、ドス、と鈍い音がしてさらに目をかたく閉じる。だけどしばらくしても体に痛みは訪れず、衝撃もやってこない。おそるおそる目を開けてみると、男と僕のあいだの絨毯に刃先が刺さっているのが見えた。
「別れてくれ。俺のルカたんと、付き合わないでくれぇ」
 柔らかな毛に突き刺さる包丁の柄を両手が白くなるほどきつく握りしめて、男はうなだれたまま懇願した。頼む、と何度も呟く口の端から、唾液がこぼれ落ちても気にせずに。

 そうか。男の気持ちがわかってしまった。僕も本当はそうやって、なりふり構わず訴えたかったから。
 声しか聞かなかった慎さんの恋人に、僕のほうが好きだって言いたかった。僕の気持ちのほうが強いんだって。慎さんが欲しいって。別れてほしいって。泣きわめいて鼻水垂らして。できるものなら今でもそうしたい。

 僕は包丁を持つ男の白い両手の上に、震える自分の両手をそっと重ねた。
「僕は晴香の恋人じゃないです」
 嘘だ、別れろ、と繰り返すだけの男の手をぎゅっと包みこむ。
「でも晴香もアイドルだけど人間です。きっとこれから恋もする。あなたが本当に晴香を好きなら、彼女の幸せを応援してあげなきゃだめです。ずっと彼女に笑顔でいてほしいのなら、彼女を不幸にしたくないのなら」
 相手に伝えながら、自分に言い聞かせた。男はなにも言わなかった。うなだれていた顔をゆっくり上げて、血走った目で僕を真正面から見つめる。
「それと、包丁は食材を切る道具です。人を脅したり刺したりするために、職人さんが精魂こめて作ってるわけじゃない」
 慎さんが心をこめて毎日磨き上げている道具を、こんなふうに使わないで。

 目の端から、涙がこぼれた。
 わかってくれると思った。振り落とした刃先で僕の体を傷つけなかったから。その一点の彼の人間らしさに望みをかけて、気持ちが伝わりますようにと祈った。
 充血した目がじっと僕を見つめ続ける。そこから目を離さずじっと見つめ返す。今度は逃げない。これは昔味わった恐怖を克服するための、試練だ。
 男がなにか言おうと口をひらきかけたそのとき、部屋の扉がひらいた。
「志紀!」
 張りのある声が、僕の名前を叫ぶ。

「慎、…………さん?」
 振り返ると青ざめた顔をした慎さんが、すごい勢いで近づいてきた。どうしたの、とかなんでここにいるの、とか問う間もなく、体当たりされ体を持ち上げられたかと思うと、浮いた数秒後、ベッドに放り投げられた。
「ふわっ」
 弾むスプリングの上で体勢を整えているあいだに、慎さんは背中を向けて、刃物男に跳びかかった。
「わーっ」
 刃物男と僕の声が重なる。胸ぐらを掴まれた男は刃物から手を離し、無理やり立たされよろけた隙に、蹴りの体勢に入った慎さんの足裏が見事に顔面にヒットして、後頭部からパタンと床に倒れこんだ。一撃で気絶する人間を初めて見た僕はあ然としてしまったけど、動かない男になお攻撃をしかけようとしている慎さんを見つけて、ベッドから飛びだした。

「待って! 慎さん、慎さん!」
 後ろから自分より大きな体を羽交い絞めにする。触れた背中も肩も異常に熱くて驚く。
「てめぇ、ふざけやがって。一生許さねぇ」
 意識のない人間相手に物騒な言葉を吐いて、荒い息を繰り返す。うなじに玉の汗がいくつも浮いていた。興奮状態の慎さんを落ちつかせようと、意味もなく大丈夫だから、と呟くと、なにが、と返ってきた。
「大丈夫なんかじゃねぇだろっ! いったいどこが! なにが大丈夫だっつぅんだよ!」
 きつく絞めていた腕を解かれ、気づいたら慎さんに抱きしめられていた。存在を確かめるように何度も何度も背中を引き寄せられて、胸の中でぎゅうぎゅう押しつぶされる。
「あ、あの…………、慎さん?」
 求められていることが不思議で名前を呼ぶと、二人のあいだに小さな隙間ができる。自分をきつく拘束していた慎さんの手は、発熱しているのに震えていた。広げられた手のひらが、緊張で冷たくなった僕の頬を柔らかく包みこんだ。

「…………おまえが、無事でよかった」
 ほかにもなにか言おうとしたのかもしれない。だけど口をひらいてからたっぷりの間を取って、慎さんはそのひとことだけを漏らすと、僕から離れてソファーに座りこんだ。
「慎さん?」
「はいはい、話の続きはあとにして」
 そう言って、慎さんの背後から現れたのは。

「あれ、マネージャー。いたの?」
「ああ、いたよ! 深町さんと一緒のタイミングでこの部屋に入ってきたんだから。スペアキーはぼくしか持ってないからね。といってもまあ、彼のおかげでぼくの出る幕はなかったし、君にはぼくが見えてなかったみたいですけど。とにかく志紀、君が無事でなによりだ」
 マネージャーが大きなため息をついた直後、外からカギが開いて、ホテルの従業員と警察官数名が室内に入ってきた。
「な、な、何事?」
 目を白黒させて尋ねると、疲れきった顔のマネージャーにのん気なもんだと呆れられる。
 慎さんとマネージャーは、僕の携帯電話もスイートルームの電話もつながらないため、ここに来るまでひやひやしていたのだと言った。

「殺害予告があったんだよ。インターネット上の掲示板で、『今日の夜、松井志紀を殺しに行く』って書きこみがされていた。そのことに深町さんが気づいてくれて。それがほんの三十分前。彼から事務所に連絡が来て、まさかと思いつつこうやってかけつけてみたら、こんな事態になってた、ってわけ」
「慎さんが……?」
 ネットの掲示板を見てた? どうやって?
 意外すぎることを聞かされてソファーに目を向ける。さっきまでの興奮状態から覚めたのか、慎さんは気まずそうに口元を手で覆って僕とは目を合わそうとしない。
 たしか、慎さんのひとり暮らしの部屋には通信機器がなかった。携帯電話すら持っていない慎さんが、いったいどうやってインターネットに接続したのだろう。
 そんな疑問は、その後のバタバタですぐさまかき消された。

 警察からの簡単な質問に答え、気を失ったまま警察へ連行される刃物男が、やはり晴香の熱狂的ファンだったということを聞かされ納得した。落ちついたら日を改めて今日あったことを詳しく聞かせてほしい、ということで、警察は部屋をあとにした。ホテルの本物の従業員も、壊れた電話のモジュラーケーブルを取り換えて退室し、残されたのは慎さんとマネージャーと僕の三人になった。


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つなげて、お守り(11)

 翌早朝からの映画の撮影現場に、一睡もできないままふらふらと赴いたら、そこまでの役作りは求めていない、と監督に一括された。
「君は病人役にしてもやつれすぎだ」
 帰り際、撮影で使ったバナナの房を手渡され思わず笑ってしまったけど、監督が本気で心配してくれてることもわかって反省した。
 ホテルの部屋に戻って、さっそくもらったバナナを一本食べる。

 ちゃんとしなきゃ、と思った。
 プライベートでどんなにつらいことがあっても、仕事はきっちりこなす。恋愛初体験の自分のぐだぐだを反省しつつ、笑顔でテレビの画面に映る仕事仲間たちのプロ意識の高さにあらためて感服していたそんなとき、携帯電話が鳴った。晴香の着信音だ。
『ハロー! 志紀ちゃん元気ぃ? 映画の撮影がんばってるぅ?』
「お酒、飲んでるの?」
 妙にハイテンションな第一声に尋ねると、ビールでも飲まなきゃ二週間も監禁生活やってられない、という答えが返ってきた。

『ねえねえ、あの週刊誌見た? 水曜発売の』
「あ……、うん見た」
『すっごい荒い画像の首元の写真でさ、アクセサリーのチェーンの形状がよく似ている気がする、って。気がするだけで記事にすんなっつの! どんだけ書くことないんだよっ』
 美少女アイドルの筋の通った暴言に、笑いながらもうんうん頷く。缶ビールを開ける小気味いい音に触発されて、自分も二本目のバナナの皮をむいてむしゃむしゃ食べた。
『この志紀のペンダントってさ、いつもつけてるやつだよね』
 くだんの週刊誌を見ているらしい晴香の言葉に頷いて、無意識に胸元をさわる。

「あれ?」
 ない。
『どしたの?』
「そうだ。切れたんだった」
 一瞬首にかけてたのが消えてなくなったのかと錯覚してぞっとしたが、すぐに昨日の出来事を思いだした。
 チェーンが切れて慎さんとの関係も切れてしまうんじゃないかと不安になって後先考えず走りだしたこと。まあ、不吉な予感は自分の予想とは別のところで当たっていたのだけれど。

 たしか切れたチェーンとボタンはコートのポケットに入れたはず。修理に出さなければ、と思いつつ、片手で携帯を耳に当てたまま、脱ぎっぱなしのダッフルコートの右側のポケットを確認する。ない。左側にも手を突っこんでみたけど、こっちも空っぽ。
「あれ、ない」
『なにが?』
 僕から不安な気持ちがうつったみたいに、耳に届く晴香の声が心もとなく響いた。内ポケットも調べてみる。昨日履いたジーパンの四つのポケットも。だけどどこにもない。バッグの中身を全部抜いても、ない。
「あれ? どこ?」

 今度は晴香の答えが返ってこない。それもそのはず。携帯電話はもう手の中になかった。だけどローテーブルに置いたそれを再び手に取ることはせず、あたりを見まわす。昨日落ちたソファーの下、ベッドのシーツの中、テーブル、洗面台、風呂、トイレ、クローゼット。全部ひっくり返してもどこにもない。
「なんで……」
 たしか昨日、出かける直前にコートのポケットに入れた。そのあとボタンにさわった記憶がないから、このホテルの室内にないのなら、無我夢中で慎さんのアパートまでの三駅分の距離を走っていた、その途中で落としたのかもしれない。
 あのボタンがないと困るんだ。慎さんと僕を繋ぐ唯一の、大切な大切な思い出なんだから。

「探しに行かなきゃ」
 慌てて扉の前まで移動してノブを回しかけ、思いとどまる。
 昨日は衝動的に外に出てしまったが、契約上、ひとりでの外出は認められていないのだ。一旦、落ちつこう。ドクドクといやな音を奏でる心臓を手で圧迫して、冷静になろうと自分に言い聞かせた、そのとき――

 ピンポーン。
 やけに間延びした音で、部屋のベルが鳴った。
 全身がびくっと震える。目の前の扉の向こうに、誰かいる。異常なほど高鳴る心音以外、しばらく無音の時間が続いた。
 そして、今度は遠慮がちなノックの音がする。
「客室係でございます」
 物腰の柔らかな男の声。きっちり三回の丁寧なノックのあと、もう一度、客室係でございます、という声が聞こえた。

 こんな時間に? 腕時計を見ると午後九時。
 おかしいと思ったけど、落し物のお届けに参りました、という声がしてはっとした。ゆっくりと扉を開けると、目の前には三十代半ばくらいの背の高いスーツ姿の男が立っていた。
「こちら松井様の落し物ではございませんか」
 男が指先で摘んだチェーンと、手のひらに乗せられた学生ボタンが目に飛びこんでくる。
「あ! そ、そうです! 今探してたんです! ああ、よかったぁ」
 焦りと不安で冷えていた体が、一瞬で温かくなるのを感じた。ほっと胸を撫で下ろす僕を見て、男もにっこり笑った。
「昨日の夜、急いでお部屋を出られた際に、松井様がポケットからこちらを落とされたのですが、声をかける余裕がなくて。まことに申し訳ございませんでした」
「そんな! 謝らないでください。慌ててた僕が悪いんです。拾ってくださって本当に助かりました」
 ほっとして手を伸ばし受けとろうとした。
 が、男はなぜかそれを僕に渡そうとしない。

「昨日はあんなに急いでどちらに?」
「え……」
 たしか男は客室係だと名乗ったが、彼の着ているスーツは従業員の制服ではなかった。
「あの……、どちら様、でしょうか」
 勇気を出して尋ねてみた、その直後、突然、部屋の中でけたたましい音が鳴って肩がびくんと跳ねる。
 妙な角度に首を傾げた男がゆっくりと前方に手を伸ばし、部屋の奥をまっすぐ指さす。

「出られないんですか?」
 このスイートルームを使用し始めて三週間、携帯電話があるため一度も使用しなかった部屋の電話が、まるで警告音のように背後で鳴り響いている。恐怖のあまり質問に答えられないでいると、男が僕の腕を掴んだ。
「ひっ」
 驚いているわずかのあいだに、男は室内に押し入り、ずかずかと僕を引きずりながら奥へ進んだ。掴んでいた僕の腕を解放し、ソファーに投げ飛ばし転がすと、男は鳴り止まない電話のコードをモジュラージャックから引っこ抜いた。そのあまりに乱暴な行為に背筋がぞわっと冷たくなる。電話のベルがやんで、しん、と静まった部屋の中で、今度はどこかからこもった小さな声が聞こえてくる。
「あれ、この声はもしかして」

 志紀? 大丈夫? なにがあったの?
 心配そうな晴香の声。さっき見当たらないボタン探しに夢中で放り出してしまった会話は、まだ一方的に続いていた。ソファーから立ち上がり、ローテーブルの上の携帯電話に助けを求めようと手を伸ばしたが、届く直前でそれは男の手に奪われ、投げられ、部屋の壁に勢いよくぶつかった携帯電話は、カバーが外れて電池パックが飛び出し落下した。

「昨日、会いに行ったばかりだってのに、翌日には電話でおしゃべりか」
 ひく、と男の口元が痙攣する。その笑ってるようにも見える奇妙な表情を見ながら、恐怖で凍りつきそうな頭で今なにが起こってるか必死で考えた。
 男は週刊誌の記者だろうか。僕がこのホテルに滞在していることを嗅ぎつけて部屋の前で張っていた。昨日の夜、僕が部屋を抜けだして慎さんの家に行ったことを、男は勘違いで晴香と逢引していたと思っている。このことを記事にされたら大変だ。晴香と晴香の事務所に迷惑がかかってしまう。誓約書違反で、うちの社長にも罰が下るかも。
 そんなふうに考えてはみたけれど、なにかがおかしい。男は週刊誌の記者にしては乱暴すぎるし軽装すぎる。だってまず手にカメラも持たないでスクープは撮れない。
 じゃあ、この男はいったい、何者なんだ? 

「お揃いのペンダントをなくして焦ったか?」
 男の震える手からこぼれ落ちた学生ボタンが、僕の足下に転がってきた。
「なんだその古臭い学生ボタンは。これもルカたんとお前の、二人だけの秘密のアイテムか?」

 ルカたん?
 それはコアなファンが呼ぶ、晴香の愛称。

 男は週刊誌の記者ではない。ハッタリだらけの報道を鵜呑みにしてしまう、妄信的で周りが見えないタイプの危険なファンだ。
 はっきりと事態を把握した直後、目の前に見覚えのある懐かしい光が見えた。
 銀色の輝く切っ先。自分の顔を映す、磨かれた美しい刃。男の手に握られたホオノキの柄。
 十年前の悪夢の再来。僕は再び、見知らぬ男に包丁を突きつけられていた。


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つなげて、お守り(10)

 地下鉄三駅分の距離を無我夢中で走った。体力と栄養の不足で何度もつまずき、着くころにはへとへとになっていたけれど、慎さんのマンションの部屋に明りが点いてるのを見つけたら、疲れや不安がぜんぶ吹き飛んだ。
 会えるんだ。三週間ぶりに顔が見れる。走ったあとの速い心拍に、別のドキドキが加わる。会ったらまずなんて言おう。どこから順番に話せばいいんだろう。考えはひとつもまとまらないまま気持ちだけが急いて、汗ばんで震える指でチャイムを押した。ドキドキしながら待っていると、勢いよく扉がひらいた。

 うわぁ、慎さんだ。
 しかも半裸。お風呂上がりらしく髪が濡れている。ただでさえ速すぎる心音がさらに高鳴って、口をひらいたまま動けずにいると。
「なにやってんだ、おまえ」
 いつもより低い声がした。慎さんの眉間に皺がよる。
「なにって……、会いに、来ました」
 約束もなしに突然来たのがまずかったみたい。不機嫌丸出しの慎さんの表情を確認して、すーっと顔から血の気が引いていく。

「誰?」
 慎さんがなにか言いかけたとき、奥から女の人の声がした。直後、慎さんと僕のあいだで扉がパタンと閉じられた。
「え」
 目の前のクリーム色の扉を見つめたまま、しばらくのあいだ、動けなかった。

 なに? いったい今、なにが起きた?
 何度か瞬きを繰り返す。無の状態から抜け出すと、脳内には混乱が舞いこんでくる。
 久々に会うのに僕の顔を見た慎さんは全然嬉しそうじゃなくて、そしたらすぐあとに部屋の中から女の人の声がして、扉が閉められて。慎さんは半裸で、女の人の声は若々しく澄んでいて、僕は今たったひとり、扉の外にいて。

「あ、恋人だ」
 彼女が家に遊びに来てるんだ。だから追いだされたんだ。そっかそっか。それなら納得がいく。というかそれ以外考えられない。
 彼女がいたんだ。それなら言ってくれればよかったのに。じゃあ、あのときどうして僕にキスなんかしたんだろう。そういえば、おいしいごはんに夢中でよく見てなかったけど、グラス一杯しかビールを飲まなかった僕よりずっとたくさん、慎さんは飲んでいた気がする。

 酔っぱらってたのかもしれない。
 それで、キス。冗談の、ノリの、酔いが冷めたら忘れてしまうような、慎さんにとってはそんな程度の軽いキス。
 でも僕にとってそれは初めての、大切な、一生忘れられない重いキスだった。
 あんなふうに慎さんが上手に、気持ちいいキスをするから期待してしまったんだ。もしかしたら、僕を好きなのかもしれないって。ずっと覚えていてくれたから、大切に思われてるのかもしれないって。慎さんが優しいから、勘違いしてしまった。

 全部、慎さんが悪いんだ。僕は悪くない。
「うん」
 自分の勘違いの責任を慎さんに転嫁して頷くと、回れ右をして元来た道を引き返した。

 思考をやめた。無心でもくもく歩く。考えない考えない。ただ懸命に手を振って足を前に出す。そのことだけに意識を集中させた。なのに涙がこぼれる。ダッフルコートに、地面に、風に飛ばされ空中に。
 冷たい涙はマスクの隙間を流れて頬を濡らし続ける。歩き疲れて切れた息は嗚咽に変わっていた。目の前が水中みたいにぐにゃりと揺れてにじむ。視界不良で歩くこともいやになって、立ち止まるとその場にうずくまった。
「ふ……、うぅ」
 どんなに抑えようとしても、しゃっくりみたいに勝手に途切れた声が漏れだしてくる。無人の小道の端に小さくうずくまり、民家のブロック塀におでこをなすりつけてしくしく泣き続けていると、背後から突然二の腕を掴まれた。

「ふゎっ」
「こら、立て」
 もう一方の腕もとられて後ろに引っぱられる。無理やり立たされてバランスを崩しかけたけど、背後からちゃんと支えてくれたから転ばずに済んだ。
 背中に感じる広くて硬い胸の筋肉。さっきは半裸だったけど、今は服を着てるみたいだ。彼女はどうしたのかな。部屋でひとり、慎さんの帰りを待ってるのかな。
「放してください」
「やだね」
「ふざけないでっ……!」
 叫んだら口を手でふさがれる。
「んふぅ……っ、んーんーんーっ!」
 それにも抵抗して腕を振り回して暴れ出すと、後ろからきつく抱きしめるように身体を拘束された。

「おまえ、飯食ってんのかよ」
「んー、んーふぁーっ!」
 うるさい、って言ったつもりだけど、たぶん伝わってない。
「ちゃんと食え。それと一回しか言わねーから、泣き止んでちゃんと聞け」
 耳に唇が付きそう距離で囁かれるとゾクゾクした。腰に巻きつく腕や、唇をふさぐ手のひらの感触を急に意識してしまって顔に血が集まってくる。
「んー、っ無理。やだぁ……!」
 両手を使って口をふさぐ慎さんの手をなんとか外す。今さっきまで失恋に打ちひしがれて泣いてたくせに、触れられただけで欲情してる自分が情けなくなる。慎さんには彼女がいるのに。追いかけてきてくれたことに、たいした意味なんてないのに。

「よく聞け」
「いらないっ」
 鼓膜に響く声にまた体を震わせ、咄嗟に耳をふさごうとした手をとられた。
「今から大通りに出て、ガソリンスタンドの前に止まってるタクシーでまっすぐホテルに戻れ。そんでしばらくは仕事以外で外出するな。しっかり部屋の鍵かけて、おかしなやつが来たらすぐにマネージャーに連絡しろ」
 慎さんは来たばかりの僕に帰れと言う。やっぱり迷惑なんだ。

 誓約書の内容とそっくりのことを言って僕を追い返そうとする。クールでビジネスライクなその対応が僕に確信させる。慎さんは僕をなんとも思ってないんだって。三週間会えなくて寂しい思いをしてたのは僕のほうだけで、慎さんはむしろ距離を置かれたことにホッとしていたのかもしれない。酔った勢いでしたキスに意味なんて求められたら困るから。だから次の約束を、しなかったんだ。
「ほら、行けよ」
 体を解放され、背中をとん、と押される。力強くて優しいその手の感触は、僕ひとりに与えられた特別なものなんかじゃなかった。のろのろと歩きだしてふと、思いだした。
 そうだ。この三週間ずっと、言いたくて言いたくて仕方なかったんだ。
 振り返って慎さんを見つめる。さっきと違ってシャツとジャケットを羽織ってる。だけど髪はまだ濡れていた。

「好きです。僕はあなたのことが」
 冷たくされても、僕のことをなんとも思ってなくても、彼女がいても。
 涙は止まっていたけれど鼻が詰まっていて、変な声になった。驚いた顔をした慎さんをその場に残し、僕は言いつけを守って大通りに出ると、止まってるタクシーに乗りこんだ。


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つなげて、お守り(9)R-18

 胸に軽く手を当てると、ドクドク激しい振動が伝わってくる。ちょっときわどい話になっただけで、下半身に血が集まってしまうぐずぐずの身体を持て余して、パリッと糊のきいたシーツに包まりながらじたばた暴れた。
 話題になっただけなのにこんなに取り乱してる。実際に会ったら昨日みたいにもっと間抜けな自分を晒すんだろうな。

 そうわかってるのにとてつもなく会いたい、声を聞きたい、姿を見たい、肌に触れたい。昨日のキスに特別な意味があったのか。自分ひとりで考えても答えの出ない問いを何度も頭の中で繰り返す。もしふざけただけだったら、もし誰にでもしていたら、もし好きって言って振られたら、ってマイナスの想像ばかりして不安になってるくせに、内から湧きだす強烈な欲望を止める方法が見つからない。

 自分が怖くなる。恋愛なんてしたことないから、この状態がどれくらいおかしいのかもわからない。心がごっそり慎さんに持っていかれて、危険な思考と不安の間を絶え間なく行き来する。こんなに思い悩んでもきっと誰にも同情されない理由は下半身。慎さんに触れたいと思うと性器に血が集まって、やもりみたいに這いつくばって純白のシーツに硬くなった欲望をなすりつけてるさまは間抜けすぎるよ。

「あ……、あー……」
 こんな格好、慎さんに見せられないとか思いながら、頭の片隅では見られたい、見てほしいって思ってる変態っぽい自分もいる。
 微々たる快感にもどかしくなって前をくつろげると、ジーパンと下着を一気に引き下ろす。右手でじかに触れるともうすでに先端からとろみのある液体が溢れてきていた。小ぶりな性器全体にまぶすようになめらかにしごく。そういえば布越しにだけど、ちょっとだけさわられたんだよね、とか考えたりして。慎さんの声や顔を思いだすと、快感がみるみる膨らんでいくのがちょっと怖い。

「あ、……っ、きも、ちいい……」
 誰かを想ってこんなことをするのは初めてで、とまどいつつも右手の動きは速まってゆく。頭までシーツをかぶって、こもる自分の喘ぎ声を聞きながら無我夢中で腰を揺らした。
「あんっ、ぁ……、ふ……、っぅ」
 性器に触れてから射精するまで、一分ももたなかったかもしれない。あっという間にはじけた精液に濡れた手をしばらく呆然と眺める。

 晴香に呼ばないしなにもしないとか言ったその直後に、自分の頭の中で繰り広げられた想像の低俗さにうなだれる。急いでシャワーを浴びて身体を清めると、なにも考えない努力をしながら眠りについた。


 なにも考えないでいられ続けたらどんなに楽だろうと思う。目覚めて頭がすっきりしたら、大変な問題に気がついた。

 誓約書の内容の一部。プライベートの単独行動は避ける。これってしばらくは慎さんに会えないってことなんじゃないか。連絡先を知らないから、週刊誌の内容を事前に否定することもできない。そもそも慎さんと僕は恋人同士でもなんでもないのだから弁明なんて必要ないのだけど、それでも真実を知っておいてほしいって思う。
 それに早く好きって言いたい。というか言わなきゃ。自由に会うことができなくなった途端、自分の気持ちをはっきり伝えたい衝動に駆られていた。

 仕事帰り、晴香の事務所が手配してくれた専属タクシーの運転手に、ホテルに戻る前に深町刃物製作所に寄ってほしいと頼んでみるも許可は下りなかった。雇い主に忠実な有能すぎる運転手を恨むわけにもいかず、部屋に着くなりインターネットで深町刃物製作所を検索してみる。だけどホームページはなく、住所は商工会のページなどに掲載されていたが電話番号はどこにも見つけられなかった。
「ど、どうしよう」
 この便利な世の中でこんな不自由を強いられることがあるのか。パソコン画面を見ながら愕然とした。


 ホテルでの生活は、今日で二週間になる。晴香と僕のスキャンダルが載った雑誌が発売されて十日が過ぎた。
 所属事務所が危惧したとおり、晴香と僕の住むマンションの周りにリポーターが群がっている様子がテレビのワイドショーで流されているのを何度か見た。マネージャーは近隣住民や仕事関係者への謝罪や挨拶回りに飛び回り、事務所も通常業務に鳴り止まない電話への対応が上乗せされて多忙らしい。少人数体制の会社ゆえ、当事者に構っている時間も人員も不足しているようで、皮肉なことに僕の周りだけは驚くほど安全で静かだった。みんなに迷惑をかけて申し訳ないと思うけれど、ここで僕が動くとことは余計ややこしくなってしまうらしいので誓約書どおり大人しくしているのだけど。

 慎さんともう半月も会っていない。それまでだってそんな頻繁に会ってたわけじゃないけれど、次の約束が無いことと不自由な今の状況が不安と焦りを膨らませる。

 慎さんは週刊誌の熱愛記事を読んだだろうか。もし読んだのなら、どんなふうに思っただろう。
 怒ってる? 笑ってる? 悲しんでる? 呆れてる? そもそもなんとも思ってなかったりして。

 いろんな可能性を想像して一喜一憂するのも束の間、結局どんなに考えても慎さんに会えないかぎり、知りたい答えは出てこないのだという点に着地して終わり。胃のあたりがきゅうっと締めつけられて、痛みを紛らすためソファーの上で膝を抱えて丸くなった。
 ここ三日ほど食事がうまくのどを通らない。風邪で喉が痛いときも骨折して高熱が出たときも食欲だけは落ちなかったのに、今は大好きな食べ物を見ても自然な笑顔が出てこなくなっていた。
 でもちょうど明日から来年公開予定の映画の撮影が始まるのだ。長患いの病人役だから、体重が落ちて頬がすり減った今の見た目はちょうどいいのかもしれないとか、そんなことを思わないと悲しくてやってられない。

「会いたい会いたい会いたいよー」
 座り心地の良いソファーの上で暴れていると、首に小さな痛みと違和感を感じた。冷たいものがするりと胸からお腹のほうへ流れて、シャツの裾から光るなにかが落ちた。
「あ」

 落下したのはペンダントだった。細い鎖から外れた学生ボタンが、テーブルの脚にぶつかって弾かれカーペットに沈む。
 そういえば今日仕事の合間に手に取った週刊誌に、晴香と僕がお揃いのペンダントをつけている、というねつ造記事が載っていた。晴香はおしゃれで服装に合わせていつもアクセサリーを変えている。たまたま似たようなものをつけていたときの写真を持ってきて、二人が付き合っているかのように演出していた。

 違うのに。間違ってるのに。自分の気持ちとは正反対の方向に暴走してゆくゴシップに焦りと怖さを感じるけれど、今はそれどころじゃない。離ればなれになったペンダントとボタンを急いで拾って確認する。ボタンがぶら下がっている、トップのシルバーチェーンが切れていた。
 慎さんと僕を繋ぐ鎖が、切れた。

「不吉な……」
 思わず呟いてからハッとする。言葉にしてしまったことをすぐに後悔した。
 言霊が動きだす前に。
 咄嗟に時計を見る。午後九時。明日は映画の撮影初日。朝五時起き。慎さんはまだ眠ってないはず。ここから慎さんのワンルームマンションまでの道のりは。
 頭が一瞬で切り替わった感覚があった。スキャンダルも誓約書もワイドショーのリポーターも敏腕有名社長の顔も、いっさいが脳内からはじき出されてなにも考えられなくなった。

 ゆっくり立ち上がると、変装用のマスクと帽子を身につけ、壊れたチェーンと学生ボタンを羽織ったダッフルコートのポケットに押しこんで、気づいたら部屋を飛び出していた。

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つなげて、お守り(8)

「非常にマズいことになってる」
 控え室に入って来るなり頭を抱えたマネージャーを見て、僕は共演者に差し入れでいただいた甘栗をむく手を止めた。
「どうしたの」
 見上げる僕を見もせず、彼は急いで帰り支度を始めながら口をひらいた。
「斉木晴香とのスクープ写真が、金曜の週刊誌に掲載される。事前の吊り広告等があさってには出るから、世間に知れるのは間もなくだ」
「…………え?」
「そして呼び出し食らったから、すぐ出向くよ」

 早口で告げられた内容を理解する間も与えられず、荷物とともに車に乗せられ、マネージャーの運転で晴香の所属事務所へ向かった。ロビーで待ちかまえていた女性に案内されるまま会議室に通される。つい二時間ほど前に急遽決まったという会合の待ち合わせ時刻ちょうど。すでに僕たち以外の出席者はそろっていた。
 広々とした部屋の中央に配置された楕円形のテーブルの周りには、業界人なら誰でも知ってる、この大手芸能事務所の敏腕有名社長と、彼の女性秘書、そして晴香と僕と、僕たち二人のマネージャーの計六人が収まった。

「まずこの写真をご覧ください」
 秘書によってテーブルに並べられた三枚の写真。

 一枚目は晴香が僕たちの住む自宅マンションから出てくる写真。二枚目は僕が同じマンションに入っていく写真。それは僕たちにとっては外出・帰宅という当たり前の日常が写されたものだった。
 そして三枚目。それはこの前、慎さんと四回目の釣りに行く日の早朝、偶然、晴香とマンションの玄関先で会ったときのものだ。晴香とマスクと帽子で変装した僕が、手を触れ合わせてふざけ合っている写真だが、暗くて表情は見えず、親密な関係に見えなくもない。もちろん、その場に僕たちと一緒にいた晴香のマネージャーは、写真には写っていない。
 秘書に手渡された金曜発売の記事には『一年も続いた! 人気者同士の秘密の同棲生活』という見出しがデカデカと載っていた。

「同棲じゃないです! 同じマンションの上下の階に住んでるだけで……」
「もちろん存じ上げていますよ。このときは晴香のマネージャーも一緒だと聞いています」
 焦って言い訳みたいな釈明をする僕を手で制した社長が、細い目を線のようにさらに細くしてゆっくりと言葉を継いだ。
「しかし、あなたたち二人が同じマンションに住んでることを知っている人間はごくわずかです。今回はこのような証拠写真を用意されてしまったため、この記事を見る人間の大半が噂を信じることになるでしょう。火消しには時間が必要です。そこでまず、私たち当事者サイドがこのことを大仰にしないこと、余裕を持って、且つ出版社にもファンにも誠実に対応すること。我々は誰も、悪いことなどしていないのですからね?」
「はい」
 晴香と二人そろって返事をすると、社長はよろしい、とここに来て初めて小さく微笑んだ。暗に本当に付き合ってないだろうね? と聞かれていたのかもしれない。

 その後、多忙なのだろう、社長は退席し、それと入れ替わりに数名のスタッフが会議室内に入ってきた。こういったスキャンダルには慣れているのかもしれない。大手芸能事務所のスタッフたちはテキパキとこれからすべきことをマネージャーと僕に説明し、あらかじめ用意されていたと思われる束の誓約書にサインを書かせると、僕の身の安全のためという名目で、しばらくホテル暮らしをしてもらうという旨を述べた。
 びっくりするくらい無駄のない会合だった。一時間後には僕とマネージャーは狐につままれたような気分で地下駐車場から夕暮れに染まる地上へと出てきた。

「なんか、慣れてたね。怒られるかと思ったけど」
「うん、僕も」
 僕たちの芸能事務所はよくいえばアットホーム、悪く言えば弱小なので、今回のことに関して発言権は用意されていないらしい。うちの社長のほうには、会合前に晴香のとこの敏腕社長から連絡が入っていたらしく、『抵抗せずあちらの言いなりになりなさい』と無理やりよくいえば消極的で、悪く言えば情けない指令が社長から下りていたのだ、とマネージャーが説明してくれた。

 晴香と僕のどちら側にも過失があった。付き合っている事実はなく、お互いがクリーンで対等な関係だけど、無理を強いるお詫び、という理由で、僕がしばらく滞在するホテルの宿泊料金は晴香の事務所が払ってくれるらしい。晴香が事務所にとってどれほど貴重な存在であるかあらためて知った上で、夜中だからと油断して、軽率な行動を取ってしまったことを反省した。

「それにしても、晴香の事務所はお金持ちだなぁ」
 二十二階の角部屋のスイートルームから夕闇に点在する街の明かりを見下ろし、ほ、とため息を吐いた。
 ホテルまで送り届けてくれたマネージャーが事務所に戻ったあと、さっきサインした誓約書の内容にもう一度目を通す。許可が出るまでほかの誰かが一緒でも晴香とは会わないこと(仕事は除く)、プライベートの単独行動は避けること、仕事の行き帰りなどマネージャーがいないときのひとりでの移動は用意された指定のタクシーを使うこと、ほか細かいこと諸々。わかりやすい言葉に砕きながら音読していると眠くなってきて、皺のないベッドにそろりと横たわったら、携帯から晴香が所属するアイドルグループの曲が流れ出した。晴香からの着信音だ。

『えらいことになったねー』
 出るとあっけらかんとした声が聞こえてきて少しほっとする。
「なんかすごいホテルのすごい部屋を用意してもらっちゃって、僕今すごいそわそわしてるんだけど」
 いいのかな。分不相応を訴えてみたら電話の向こうで晴香が大笑いしている。
『わかる。スイートでしょ? 無駄に広いのに持て余して、使わないベッドとか部屋とかあってさ、もったいないよね』
 話を聞くと、晴香も別のホテルのスイートルームにいるらしい。孤独だけど同じ境遇にいる安心感に包まれて、うんうん頷いていると、そうだ、と指を鳴らす音がした。
『ねえ。せっかくだからさ、部屋に彼氏呼んだら?』
「へ?」
『ほら、あの写真のときのさ、一緒に釣りに行った人』
「だからあの人はそんなんじゃないって」
『じゃあ、どんな人なの?』
「どんなって。恋人じゃないけど……、僕が一方的に好きなだけ」
 自覚したての気持ちを正直に伝えると、わお、と興奮した晴香の声がして、なぜか顔が真っ赤になってしまった。

『じゃあいいじゃん。呼んじゃえ呼んじゃえ』
「呼ばないよ! 呼んでどうするの」
『そんないい部屋ですることっちゃあ、ひとつしかないでしょうよ』
 エロおやじみたいなアイドルの発言に、僕の顔の赤みはさらに増してゆく。それは晴香の、部屋ですること、という言葉から慎さんとのキスを思い出したからで。
「バカ! 呼ばないし、なにもしないよ」
 叫んで枕に突っ伏すと、耳に当てたままの受話器からふーん、と意味深な声が返ってくるから、これ以上の会話はもう無理。強引に話を丸めて、たぶんにやついてる晴香との通話を切った。


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