6月お題SS『つかず離れず日和』

こんばんは
6月のお題SSに参加させていただきました(遅刻組(-_-;)


2016年6月お題SSズ募集詳細

主催幹事:牛野若丸さま

お題発案者:牛野若丸さま

お題:
「雨」
「糸」
「災」
(全て解釈自由、3つの中からいくつ選んでもOK)

文字数:4000字以内(1936字)


お題を3つとも入れてみましたが、ほぼ内容に絡んでおらず、さらっと入っています。
よろしくお願いしますm(__)m




 大きな岩に腰かけ、川に釣り糸を垂らしてぼんやりしていた。その時、すぅと水面に波紋ができて、中から三人の南が出てきた。
「うわぁっ」
「あんたが落としたのは金のおれですか、銀のおれですか」
「へっ?」
「それとも何の変哲もないこの、いつものおれですか」
 川べりに立ち、黒髪の南がしゃべっている。そのとなりには笑顔でたたずむ金髪の南と銀髪の南がいる。黒髪・金髪・銀髪の順で、三人の南が横並びで立っている状態だ。
 どういう状況だ。なんだこれ。
「えっと…………」
 とりあえず落ち着け。オレが落とした南は……、ってそもそもオレは南を落としてないし南は元からオレのものじゃないし。
でもきっと、正解は――
「きみ。黒髪の、何の変哲もないいつもの南」
 これに違いない。たしか本当の物語でも、最後は金銀でないほうを選んでたし。
「はい、ブー。だめ。失敗」
「へっ? なんでなにが」
「答えるまでに間があった。迷いがあるとだめなの」
「ま、迷ってないし!」
「それになんだよ、何の変哲もないって。失礼なやつ」
「それは南が自分で言ったんだろ!」
 金髪と銀髪の南は唐突に笑顔を引っこめるとバシャンと川へ飛びこみ、浅瀬の緩やかな流れの中、あっという間にその姿を消した。続いて行こうとした黒髪の南の腕をつかんで引っぱる。
「待って南、行くなよ」
「バイバイ」
 つかんだ手の中からするっと細い腕が抜け、黒髪の南も水にもぐると透明になってまもなく見えなくなった。


「みなみーっ! 行かないでー!」
「うっさいよあんた、ほら起きろ酔っ払い」
 頬をぺちぺち平手でたたかれて目がひらく。視界いっぱいに南の顔。
「あれ? ここは?」
「帰るぞ」
 そういえば、飲み会に参加してたんだっけ。
「ほかのみんなは?」
「とっくに帰った」
 ちょっと不機嫌そうに目を細める。童顔に不似合いな低い声を聞いて本物の南だ、と思った。


「へんな夢見てた」
「夢?」
 居酒屋を出て、初夏の雨上がりの夜を南とふたりで歩いて帰る。さっきは酔いが回って壁にもたれたまま眠ってしまったのだけど、どうしてあんな変な夢を見たのか。


 今日は南に誘われて、南の大学の仲間たちとの飲み会に参加した。紹介したい女の人がいると事前に言われていた。
 つやつやした金髪セミロングヘアーのその女性は、まだ髪を染めていなかった昨年まで、自分や南と同じ高校だったらしいけど見覚えはなかった。
 となりに座った彼女は口数が少なく、ただオレの太ももにずっと手のひらを乗せていて奇妙だった。なにより災難だったのは、どうやら彼女に気があるらしい男が彼女とは逆側のオレのとなりに座っていて、オレの気を彼女から逸らそうとしているのか、彼の大学での専門だという宇宙の話を延々聞かされたことだ。
 左右からの圧迫。銀河の情報で埋めつくされてく頭の中、金髪女性のかけてくる微かな重みに足をしびれさせていたら、もともと酒に強くないせいもあって、レモンサワー一杯で意識はふわっと遠のいた。
 金髪と銀河から、金のおれですか銀のおれですか、になったのか。夢って不思議すぎる。
「ところでさ、なんであの女の子をオレに紹介しようと思ったの」
 ちょっと強めの口調で、南に、要らなかったのだと暗に伝える。
「あんたのこと紹介してって、言われたから。高校の時から気になってたんだって」
「それさー、南のほうで断ってよ」
「……なんて言って断ればいいんだよ」
「『あの男は俺に惚れてるから狙っても無駄ですよ』」
「言えるかバカ」
 夜天の下でもわかるくらい、南の顔が赤く染まる。
 ああオレって単純だなって思う。
 ちょっと面倒な時間を過ごしたあとでも、結果的に南のこんな反応が見れてしまうと、今日全体をいい日と決めちゃうようなマヌケな大らかさがあるから。
「……ごめん、無理やり誘ったりして。あんたは楽しくなかったよな」
「いいよ。南は楽しかったんでしょ」
 と、今の嫉妬はちょっとよくない。オレが金銀にはさまれてた時、南はテーブルの向こうで大学の先輩らしき男と楽しそうに話しながら飲んでたんだ。
 よくないと自覚しつつ、そんなことを思い出してやっぱりムカムカしていたら。
「人付き合いだから」
 きっぱり言いきった分かれ道、南が立ち止まる。夜と同化した黒髪の、オレは何の変哲もないいつもの南がやっぱり好きだ。
「今日はうちに来る?」
 明日は休み。大学が休みの前日はどちらかのアパートで朝まで過ごすことが、高校を卒業して一年が経つ、進路が別れたオレたちふたりの暗黙の決め事だった。
 静かにたしかにうなずいた南の手首をつかむ。
「な、なに」
「いや、夢の中と違って逃げないなって思って」
「なに言ってんだよ」
 わけがわからないと言いたげに目をすがめた南の脈が速い。細い腕をそっと引っぱりながら、日付が変わる直前、今日はやっぱりいい日だと思った。




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Re: No title

Rさまへ

お久しぶりです。
今回の結果、残念でしたが、Rさまに短編を読んでもらえて、素敵と言ってもらえて、本当に嬉しいです。
自分でもひさびさに読み返しました。
Rさまの応援に背中を押されつつ、勉強不足は否めないので、BLを読んで吸収して、ひとりで頭でっかちにならないよう、努力してまいります。
ずっと見てくれている人がいることに救われています。
コメントありがとうございました<(_ _)>

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Author:りんこそ
宗川倫子(そうかわりんこ)
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